第44話
「シャイニングスピア!!」
ソフィアが魔法を唱えると、光の大きな槍が現れ、離れた場所にある的を撃ち抜いた。
フォトンレイは拡散型の攻撃魔法に対して、シャイニングスピアは一点集中型の攻撃魔法のようだ。
「素晴らしいですわ。ここ1週間でここまで使えるのは驚きですわ」
毎日着実に成長するソフィアを見て、カリーナは上機嫌だった。
「先生の教え方が上手いからですよ」
「そ、そんなことありますわね!」
ここ1週間、カリーナのことが少しだけわかってきた。
まず、カリーナはソフィアやココナよりも1つ年上だということ。
そして、やたら自意識過剰なところ。
「それでは今日もやらせて頂きますわ」
「ははは・・・・・はぁ、もう好きにしてください」
ソフィアは既に諦めた顔で言った。
「今日はどれを着ていただきましょうか!」
カリーナが後ろに置いてある巨大なカバンから、カラフルな服を何着が出していく。
そのどれもが、こうキラキラやフリフリとかが多く施されていたり、布面積があまりない下着のような服も入っている。
「リアン、向こうに行っててね」
「にゃあ」
俺はソフィアの肩から降りて、隅の方へ行き、寝る体勢に入る。
寝るのは俺1人で練習場を出る訳にもいかないので、これから起こることに対しての対応策なのだ。
「さあ!ソフィア!服を脱いでください!!」
カリーナはソフィアのことを溺愛しているのかわからないが、色々な服をソフィアに着させて楽しむのだ。
最初はソフィアは服を剥かれて、無理矢理着替えさせられていたが、今では諦めて自主的に着替えるようになっていた。
「えっと、これでいいですか?」
「駄目ですわ!この服に下着は無用!!」
「じ、自分で脱ぎますから!あ、へ、変なところ触らないで」
俺達の他に誰もいない練習場で、カリーナによるソフィアの着せ替えショーが行われるのだった。
☆ ☆ ☆
「満足ですわ~」
「そ・・・そうですか」
終わったようなので、俺はソフィアの方を見る。
ソフィアはフリフリの付いたピンク色の服を着たまま、地べたに座り込んでいた。
「にゃあ(おつかれ)」
俺は労いの意味を込めて鳴きながら、ソフィアの側に寄った。
「ありがとね。リアン」
ソフィアは頭を撫でてくれながら答えてくれる。
「着替えるから、もう少し向こうで待っててね」
「にゃあ」
凄く似合っていて可愛いので、少し勿体無いと思うが、この服で出歩くのはやはり恥ずかしいだろうな。
俺はそんなことを思いつつ離れていく。
「あぁ・・・幸せですわぁ」
カリーナは満足そうな顔をして、服をしまっていた。
そういえば、カリーナはいつもフリルが沢山付いた服を着て、平然と町中を歩いている。恥ずかしくはないのだろうか?
「そうそう。ソフィア、こんなのも用意させて頂いたんですが」
「こ、これって」
俺は何かと思い、カリーナと着替え途中のソフィアの方を向く。
カリーナの手には小さい服のようなものが握れていた。
そう、まるでペットとかに着せるような、可愛らしい服を。
(・・・・・・・・逃げよう)
俺は嫌な予感がして、この場から逃げ出す。
しかし、練習場の扉が開けられず、逃げれない。
「あら?どこに行くんですの?」
「っ!?」
いつの間にかカリーナが例の服を持って、俺の後ろに立っていた。
「リアンでしたわね?これを着るのですわ」
カリーナが持っている服は、フリルがたくさん付いている可愛らしい服だった。
流石に男の俺は着るわけにはいかない。いや、着たくない!!
「逃がしませんわよ。ソフィアも最後に着てくれたのですから、使い魔であるあなたが逃げてどうするのです?」
「うぅ・・・」
ソフィアはというと、黒猫の耳と尻尾を付けて、ビキニのようなピンクでフリルいっぱいの露出が多い服を着ていた。
「さあ!これを着てソフィアと並ぶのですわ!」
「に"ゃあ"ーっ!!!」
俺はこの日、人生初めてフリルの多い服を着ることになってしまうのだった。
☆ ☆ ☆
「そうか。ソフィア・ミールが」
「はい。だいぶ魔法も安定してきているので、近い内に行ってもらおうかと思ってます」
「ふむ」
ジャネットの話を聞いて、ディケイルが頷いた。
「そうだな。ソフィア・ミールならば大丈夫だろう。だが、ココナ・ユースフィアの方は今回は危険だと思うのだが」
ココナに光属性の適性がない。
アンデッド相手では足止めがやっとだと、ディケイルは考えていた。
「そこはあれを使えば戦えるかと思います」
「しかしあれは・・・そうか。一緒にいるのであれば大丈夫か」
「そういうことです。それと、ミールさんに魔法を教えているカリーナ・メルエムさんも同行してもらう予定です。本人の許可も取ってあります」
「・・・・・・わかった。今回は特例で同行してもらおう」
レジスタンスの仕事に一般人のカリーナが同行するのは危険が伴うので、ディケイルも本来は許可をしたくない。
だが、光属性の攻撃魔法が使える人材は貴重だ。
今回は本人の許可も取れているとのことなので、ディケイルも許可をすることにした。
「それと最近は昼間からもアンデッドが出没するようになっているそうです」
「それは私の方にも情報が入ってきている。カンポ村には申し訳ないが、迂回をして物資の搬送をするように指示をした。アンデッドが相手でなければ、護衛として内から出せるからな」
カンポ村の野菜はフォルティスの町の食料元だ。
これが届かなくなるのは問題があるので、ディケイルはすぐに対応策を出したのだ。
「それにしてもカリーナ・メルエムか。まさか彼女がこの町にやって来るとはな」
「そうですね。以前会った時より魔法も上手くなってましたし」
「そのようだな。でなければ1人旅なぞ出来んからな」
2人は少し懐かしい気分になった。
「それでは私はミールさんの様子を見て、対応してもらうようにします」
「そうだな。後で私もソフィア・ミールに会いに行くとしよう」
こうして、正式にカリーナも一緒にアンデッド討伐に参加することが決まった。
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