第32話
「・・・・・・・」
「すー・・・すー・・・」
ソフィアの過去を知った日の夜。
俺は枕元でソフィアの寝顔を見ていた。
(ソフィアがあの時の女の子だったのか)
俺の頭の中はそのことでいっぱいだった。それと同時に運命のようなものも感じていた。
(まさかあの事件がきっかけで、ソフィアが俺に憧れてレジスタンスを目指すことになったなんてな。更にそのソフィアの使い魔が俺なんて。どんな運命だよ)
「リアン・・・さま・・・」
ソフィアは今日のことがあり、過去のことを思い出しているのだろう。
うっすらと涙を浮かべて俺のことを寝言で呼んだ。
(今の俺1人ではソフィアを助けることは出来ない。でも、ソフィアと寄り添って一緒に進むことなら出来る)
俺はソフィアの涙を尻尾で拭う。すると、ソフィアはくすぐったそうにして、尻尾を手で追い払った。
「だめ・・・だよ・・・リアン・・・寝なきゃ・・・すー・・・」
少し目を覚ましたのかそんなことを言ってきた。そして、再び規則正しく寝息が聞こえてくる。
(・・・もし・・・・・・もしソフィアの祖国、フルーリアを滅亡に追いやった犯罪組織がいると知ったら、ソフィアは復讐を・・・)
俺はそこまで考えるが、頭を横に振ってその考えを否定する。
(まだソフィアはそのことを知ったわけではない。それにソフィアの性格上、そんなことはありえないはずだ)
俺は思考に一区切りを付けて、ソフィアの傍らで眠りに就くのだった。
☆ ☆ ☆
「えぅうぇええ!?ソ、ソフィアってお姫様だったの!?」
翌日、ソフィアは相棒であるココナに簡単に自分のことを話した。すると、ココナはすっとんきょんな声を出して驚いた。
そんなココナの声を聞いた周りの人達が何事かと思い、視線を送ってきている。
今は喫茶店でお茶をしていたところだ。そんなところで大声を出したら注目を浴びるのは当然といえる。
「ココナ、声が大きい」
「ご、ごめん」
流石のココナもマナーが悪いと思ったのか、周りに向かっても頭を下げた。
「そ、それじゃあさ。これからはソフィア様って呼んだ方がいいってこと?じゃない、ことですか?」
ココナは何故かソフィアを様付けで呼んで、敬語まで使い始めた。
「今まで通りでいいよ。もう無くなっちゃった国だし」
ソフィアは少し悲しそうな笑顔で言った。
だが、ソフィアの言い回しには少し語弊がある。
確かにソフィアの祖国フルーリエ公国は滅んだが、そこの土地はまだフルーリエ公国所属なのだ。
周りの国からすれば小さな土地だが、このままフルーリエ公国所属にするのはどうだ。という話が上がった。
だが、その土地にまだ健在している小さな村の人達からこのまま残してほしいという願望があったのだ。しかし、国を管理する人はいない。
そこでフォルタール王国はフルーリエ公国の管理を買って出た。
仕事が増えるということで、一部の人から反感を買ったらしいが、友好国の民を助けるというのはフォルタール王国の民として当然だ。という声がフォルタール王国の至るところから上がったのだ。
そういうことから、フルーリエ公国はフォルタール王国の所属国家の形を取っている。
このことはソフィアも知っていると思う。しかし、ソフィアの言うとおり、フルーリエの国自体は滅んだと言っても過言ではないので、そう割り切っているように俺には見えた。
「ソ、ソフィアがそう言うのなら」
「まだなんかおかしいよ?」
「う、うん」
ココナはまだぎこちなかったが、この後次第にいつもの調子を取り戻していった。
☆ ☆ ☆
「うーん、変わったことかぁ」
喫茶店でお茶をした後、俺達はフォルティスの町で聞き込み調査をしていた。
「ここで長らく商売してるけど、そういう話はあまり聞かないなぁ」
「そうですか。ありがとうございました」
既に何人かの人に質問をしたが、生徒が襲われたという事件は公表されていないので、表立って変な噂等はなかった。
「すみません、少し聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」
次にソフィアが声を掛けたのは、露店を出しているおばさんだ。
「なんだい?」
「最近変な噂とか聞かないですか?小さなことでもいいのですが」
「噂ねぇ・・・」
おばさんは思案顔になって考え始めた。
(これはまた知らないってパターンだな)
今日はずっとこんな感じで、何も情報を得られないのだ。
「そういえば」
少し時間が経つと、おばさんが思い出したように話し始めた。
「以前廃工場が爆発する事件があっただろ?」
「はい」
確かジャネットが戦ったという場所だな。爆発もジャネットの魔法によるものっぽいし。
「最近、その廃工場があった場所に怪しい人影を見たって噂は聞いたことあるねぇ。人にもよるけど、昔その工場で働いていた幽霊じゃないかって言っている人もいたよ」
「廃工場・・・わかりました。ありがとうございます」
ソフィアはお礼を言って、その場を離れた。
「どうするの?ソフィア」
「うーん、一度ジャネット先生のところに聞きに行こっか。何か知っているかもしれないし」
俺達はジャネットのところに、廃工場での戦いについて聞きに行くのだった。
☆ ☆ ☆
「ヘイグ君、気分はどうですか?」
「・・・・・・・・ィ"ア"、ゴロ"」
「ふむ」
黒いローブを着た男、スラヴァ・グソフはヘンリー・ヘイグに問いかけるが、まともな返事は返って来なかった。
場所は暗く、辺りはここにいる2人の声と息遣いしかない。
(この状態ではなんとか制御出来ていますか。でも完全に制御するのにはまだ何か足りない)
スラヴァはそう考え、次の段階のことを思案する。
( ああ、そうだ。後は戦闘能力も見なければなりませんか。相手が弱くては計れない。となると・・・)
スラヴァはやりたいことが、次々と思い浮かんでくる。
(ああ、早くこの
スラヴァは不気味な笑みを浮かべているのだった。
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