第33話
ジャネットから話を聞いた後、俺とソフィア、ココナの3人はある場所へと向かっていた。
「ジャネット先生が戦った場所ってここかな?」
「なんにもないね」
到着した場所はただの広い空き地だった。
隅の方に建物の跡が残っているぐらいで、中心の方は更地になっている。
(・・・・・・いや、ジャネットの魔法でこうなったのか)
俺はここに廃墟となった工場があったことを知っている。
だが、今は端の方に瓦礫となった建物の残骸があるだけで、辺りは砂や土といった地面が剥き出しになっている。
いや、よく見ると、爆心地と思われる場所に向かって地面が低くなっていた。
「ねぇ、これって足跡だよね?」
「そうみたい」
ココナが見つけたのは人らしき足跡だった。
それも同じぐらいの大きさのが行ったり来たりしているようだ。
恐らくだが、1人がここを行き来しているように思える。
「向こう・・・だよね」
ココナを先頭に足跡を追う。
すると、地面の一部が無くなっていた場所があった。
「地下室?」
砂を被ってて少しわかりづらいが、地下へと続く階段への扉があった。最近開けられた跡もある。
(・・・・・・下から何かの気配がするな)
俺は地下に何かがいる気配を掴んだ。
こういう時は猫の方が鋭敏で助かる。
「リアン、下に何かいるのかな?」
「にゃあ(いる)」
俺は肯定の意味も含めて頷く。
「いるみたい。ココナ、どうしよっか」
「私達2人なんだから大丈夫!って言いたいけど、ココナも嫌な予感がするんだよね」
いつものココナなら迷わずに突っ込むところなのに、今日のココナは冷静だ。
現に俺も、地下から感じる気配は普通の魔獣ではないと感じているのだ。
それに地下室から僅かに漂ってくるこの嫌な匂い。
(これは血の匂い・・・だよな)
「で、でも証拠とかないと報告出来ない・・・よね?」
「そ、それは・・・」
これはレジスタンス見習いではなく、レジスタンスのメンバーとして頼まれた極秘任務だ。
その信頼には答えたいという気持ちが2人にはあった。
「リアン、おいで」
「にゃ」
俺はソフィアの肩に乗り、臨戦態勢を取る。
「ココナ、ゆっくり下りてみよ」
「・・・それしかないよね」
2人はゆっくりと薄暗い地下への階段を下りていった。
☆ ☆ ☆
「失礼する」
「あら?またやってくるなんて珍しいわね」
ジャネットは個室で書類仕事をしていた。
魔力が枯渇しても、こういった書類仕事なら出来るので、デスクワークをやっているのだ。
「ああ、君は機密文書の中身を知っておいた方がいいと思ってな」
「本当に珍しいわね。でもいいのかしら?」
「ああ、恐らくリアン・ユーベルだったらわかってしまうことだからな」
「どういうこと?」
ジャネットは手を休め、ディケイルの方を向く。
その際に足を組み換えた。
「・・・見えないか」
「見せるわけないでしょ。で、機密文書の中身って?」
ジャネットはスカートを押さえながら、ディケイルの言葉を待つ。
「あれは
「
「都市伝説ではない。昨日話したフルーリエ公国が滅んだ原因も
「ちょ、ちょっと待って貰える」
ジャネットは混乱してきたのか、頭を抱える。
「盗まれた資料が
「そうだ」
ジャネットが整理した内容をディケイルは肯定した。
「私もよくまだ解らない所はあるが、
「魔力を・・・まさか女子生徒の死因って」
「強制的に魔力を全て奪われた時のショックによるものだろう」
「なんで昨日言わないのよ!」
「
「・・・・・・・」
ジャネットはディケイルの覇気に黙り込んでしまう。
「あの子達はこのことを知ってるの?」
「いや、知らないだろう。この情報を教えることの許可を私でもそう簡単には出来ない」
ディケイルは渋い顔をして言った。極秘資料の開示はディケイルよりレジスタンスの位が上の人間の許可がいるのだ。
「それじゃあなんで私には教えたのよ」
「お前には許可が下りたからだ」
「・・・そう。私からあの2人に教えることは」
「やったらお前が消されるぞ」
「・・・・・・・・」
ジャネットは魔法犯罪を取り締まるレジスタンスの組織の暗部を少し覗いたような気がした。
「だが、知っている者が1人付いているかもしれん」
「はい?」
「いや、何でもない」
ディケイルの今の発言は気になったが、ジャネットはソフィアとココナの無事をただ祈るだけだった。
☆ ☆ ☆
「ね、ねぇ、ココナ」
「な、なに?」
ソフィア達は地下の狭い廊下のような道を歩いていた。
灯りは僅かだが、魔法具で照らされているので、真っ暗ということはない。
「ここ・・・何かいそうだよね?」
「い、いるってお化け?」
霊体の魔獣もいるにはいるが、こんな町中にいるとは思えない。
「っにゃ!」
「きゃっ!り、リアン?」
突然服の中に尻尾を入れられて驚いたソフィアだが、俺は狭い通路の奥を警戒する。
(この感じ・・・
「にゃあ!!」
俺はそう判断すると、ソフィアの肩から飛び降りて、戻るようにと、ソフィアの靴下を引っ張る。
「え?戻れってこと?」
「にゃあ!!」
「わかった。ココナ、戻るよ」
「う、うん!」
ココナはソフィアが使い魔である俺の言うことを素直に聞いていることに驚いていたが、ソフィアの言葉に従ってくれた。
「ねぇ、リアン。何がいるの?」
「にゃにゃあにゃ!(
俺は理解出来ないと思いつつも、ソフィアの問いに答える。
「なるほど」
「にゃっ!?(えっ!?)」」
「ソフィアわかるの!?」
ソフィアに俺の言葉がわかるようになったのか。
そう思ったが。
「わからないよ。でも嫌な何かが来るっていうことはなんとなくわかった」
「そ、そうだよね」
(いや、なんとなくわかるだけでも凄いと思うが)
そうこうしている内に、無事に外へと出ることが出来た。
「ほう、貴方が彼がご執心のソフィア・ミールですか」
「「「っ!?」」」
突然響いた声に振り返ると、黒いローブを深く被った男が立っていた。
(こいつは・・・
俺はこいつの正体に気付き、ソフィアの肩に即座に乗る。
「あなたはいったい・・・」
「私は貴方に執着していた彼に手を貸しただけです。ほら、彼が出てきましたよ」
黒いローブの男は地下への入り口を指差しながら言う。
振り返ると、黒く染まった肌の人間のようなものが立っていた。背中から4本の触手のようなものを生やし、不気味な赤い目をこちらに向けていた。そして、その顔には覚えがあった。
「まさか・・・・ヘイグ・・さん?」
それは
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