第27話
「な、何を・・・何をしたんですか!?」
ソフィアはヘンリー・ヘイグの変わりようを見て、そう叫んだ。
「何をって、見ればわかりますよね?」
レジスタンスのメンバーであり、今回の決闘の審判を買って出てくれたレジーノ・ノバルはニコニコしながら答えた。
ヘンリー・ヘイグは黒い魔力が身体から溢れ出した後、そのまま黒い魔力に飲み込まれてしまった。
そして、黒い人影のような姿になり、赤い瞳をぎらつかせ、観客に向けて黒いファイアボールのような物を複数投げたのだ。
観客はレジスタンスを目指す生徒ばかりだったので、怪我人は数人程度で済んでいる。
(あれは
だが、本来なら自身の許容量を越える魔力なんて、自身の魔力器官は生み出すことは出来ないはずなのだ。
なので、起こるとすれば、外部から魔力を供給するしかない。
(だけどいつ魔力を供給された?そんな兆候はなかったはずだ)
俺自身も
1回目の時はとある国が1つ滅んだ。
(くそ!ジャネットがいないこんな時に!!)
「ソフィア!!」
「きゃっ!」
いつの間にか、ロックゴーレムが現れており、後ろからソフィアを襲おうとしていた。
だが、観客席から文字通り飛んで来たココナの蹴りで、ロックゴーレムは後ろに倒れた。
「で、でも試合が」
「試合どころじゃないよ!」
(珍しくココナが正論だな)
観客席からは火の手が上がり、コロシアムの地面からロックゴーレムが次々と出てきている。
そのため、生徒は戦う者と逃げ出す者が出てきて、騒然としていた。
そして、ヘイグはゴーレム達の中で高らかに笑っているように見える。
「これだけ暴れれば彼も動きやすいでしょうね。おっと」
レジーノは身軽に跳躍して、飛んで来たファイアボールを避けた。
「ヘイグさんを戻して下さい!」
「それは無理な相談です。エアロショット」
「ストーンウォール!」
視認が難しいエアロショットはストーンウォールで防ぐのが定石だ。
ソフィアは俺の魔力制御無しにここまで出来るようになっていた。
しかし、定石だからこそ、ベテランであるレジーノはそれを上回ってくる。
「あぐっ」
「見事なストーンウォールですよ」
レジーノはエアロショットをストーンウォールで防ぐことを見通して、身体強化状態のまま跳躍し回り込み、ソフィアを上から地面に倒し、押さえ付けてきたのだ。
俺はその時の衝撃で吹き飛ばされ、ソフィアから離れてしまった。
「ソフィア・ミールですか。中々の逸材でしたがここまでです」
「ソフィア!!くっ!」
ココナもロックゴーレムの対応するので手一杯だ。
猫の俺ではソフィアを助けることが出来ない。
「死になさい」
「っ!!」
ソフィアは死の恐怖から目を瞑る。
「エアロブラスト!!」
「・・・・・・・え?」
ソフィアは気が付くと、身体を押し付けていた圧力から解放されていた。
「ミールさんだったね。大丈夫かい?」
「あ、あなたは」
そこには金髪をした男子生徒が片手剣を構えて、立っていた。
「アレイン・クリフォードだ。助太刀する」
アレイン・クリフォード。
彼は今年の1年生の中でもずば抜けて戦闘と魔法の技術を買われた首席の生徒だ。
模擬戦の時も素晴らしい戦闘を見せてくれていたのを覚えている。
「お願いします。クリフォードさん」
「任せてくれ。ミールさんは援護を」
「はい!」
「行くよ」
クリフォードは身体強化をして、レジーノに向かって走り出す。
「くそっ!!クリフォードか!」
「やはり倒してはいないか」
レジーノはエアロブラストの衝撃を自ら跳ぶことで上手く殺し、ほぼ無傷だったのだ。
クリフォードは一気にレジーノに迫り、連続で剣を振るい、レジーノを追い詰めていく。
「っ!?」
レジーノは突然後ろへ跳躍をする。
クリフォードはレジーノを逃がさないように追おうとするが、何かに気が付き、追うのをやめて、その場から一気に離れた。
すると、上から巨大な炎が降ってきて、クリフォードがいた場所で大きな爆発を起こした。
メテオフォールだ。
飛んできた方向を確認するとヘンリー・ヘイグがいた。どうやら、撃ってきたのはヘイグのようだ。
「にゃあ!!」
「リ、リアン!!」
俺もソフィアの肩に戻り魔力制御を行う。
「んっ・・・アクアレイザー!!」
ソフィアは再びメテオフォールを撃とうとしていたヘイグに向かって、アクアレイザーを放つ。
アクアレイザーはヘイグの胸を一直線に貫き、風穴を空けた。
「リ、リアン、やりすぎなんじゃ」
ソフィアは殺すつもりはないと思って魔法を使ったのだろう。
以前のアクアレイザーはかなり手を抜いて放ったから大丈夫と認識があったのかもしれない。
だが、ヘイグは
「流石だね、ミールさん。それなら僕も」
クリフォードはヘイグがよろけて倒れるのを確認したら、再びレジーノに接近する。
レジーノはエアロショットで止めようとしているが、クリフォードは全て見抜き、避けて、一気に接近する。
「バカめ!エアロブラスト!!」
レジーノは読んでいたかのように、クリフォードが来る場所にエアロブラストを放った。
だが、そこにはクリフォードはいない。
「止めだ。サンダーボルト!!」
「がぁっ!!」
クリフォードは跳躍をしてレジーノの頭上から真下に向かって、風属性のサンダーボルトを放った。
サンダーボルトは雷を放つ魔法なのだが、制御が難しく、今のクリフォードのように真下に向かって撃つか、近くで撃たなければ、狙いが逸れてしまうのだ。
(本当に戦い方が上手いな)
俺から見ても、クリフォードの戦い方は見事なものだった。
雷を受けたレジーノはその場に倒れて気絶してしまう。
「ナイスだったね。ミールさん」
「クリフォードさんもお見事でした」
2人はお互いに労った。
「そ、ソフィア!手伝って!!」
「わかった!今援護するね」
「それでは僕も他を手伝ってこよう」
コロシアム内のロックゴーレムはそう時間が掛からずに、全てを倒すことが出来た。
被害はコロシアムの建物と、数人怪我を負ったぐらいで、死人は出ることはなかった。
だけど
「・・・ヘンリー・ヘイグの死体は何処へ行ったんだ」
ソフィアが止めを刺したと思われるヘンリー・ヘイグの死体が無いことに、クリフォードだけが気付いていた。
☆ ☆ ☆
「やられた」
ディケイルはジャネットを個室に連れていき、コロシアムが騒がしいことに気が付き、急いで向かった。
ところが、既に事は片付いており、生徒同士で色々と片付けをしているところだった。
このことは未来のレジスタンスを担う者達として喜ばしいことだ。
ディケイルも例外では無く、その光景を見て嬉しくなった。
だが、ディケイルの自室に戻ってくると、状況が一変した。
「地下室に誰か入られたか」
地下室からは人の気配は無い。
この地下室は普段隠してあり、ぱっと見ても分からないようになっていた。
そうしていた理由は表に出してはいけない物が保管されているからだ。
ディケイルは確認のために、地下室へと降りていった。
「・・・・・・なるほど。ここに来たのは
無くなっているものを見て、ディケイルは呟いた。
「だからジャネットが狙われたのだな」
ディケイルはジャネットとリアンが
「ジャネットにどう話したものか」
ディケイルは今後どうするか、考え始めるのだった。
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