第24話
「嬢ちゃん、本当にありがとな」
グランは思考が正常になってくると、ソフィアとココナの元に歩きながら、お礼を言った。
「ううん!いい練習になったから」
「これでクエスト完了ですね」
「だな。取り敢えず馬車まで戻るぞ」
「「はーい!」」
ロックバードの討伐クエストは終わり、馬車まで歩いていく。
「ソフィア、今日は大丈夫なの?」
「んー、後でかな。ここだとね」
「それもそっか」
無事に馬車まで戻り、グランは出発の準備に取り掛かった。
「今の内に着替えちゃうね」
「りょーかい!ココナはそこら辺を探検してくる!」
ココナはそう言うと、すたこらと走っていってしまう。
「ココナは元気だなぁ。それよりパンツ濡れて気持ち悪いから着替えちゃお」
ソフィアは馬車の中に入り、替えのパンツを出す。
俺は背を向けて、ソフィアが着替え終わるのを待っていると、外に人の気配を感じた。
「嬢ちゃん、もう少し時間が掛かるからゆっくり・・・」
「え?」
俺が振り替えると、パンツを下ろし、お尻をグランの方に向けているソフィアと、その光景を見て固まってしまっているグランの姿があった。
「あ、あ、あの・・・」
「す、すまねぇ!!」
グランは準備の方に慌てて戻っていった。
「・・・・・・・・見られちゃった」
ソフィアは顔を真っ赤にし、その場に膝を着いた。
(それより早くパンツを穿いた方がいいんじゃないか?その格好は色々とまずいような)
「ただいまっと!って、ソフィア!色々見えてるよ!?」
「~~っっ」
ソフィアはパンツを穿いていないことに気が付き、替えのパンツを素早く穿いた。
「りあ~ん!」
ソフィアは着替え終わった途端に俺を抱き締めてきた。
「見られちゃったよぉ!恥ずかしいよぉ!」
ソフィアがそのまま俺を抱き締めたまま、顔を隠しているのであった。
「いやぁ、ソフィアって生えていないんだね」
「少しは生えてるよ!!」
(お前達は何を叫んでいるんだ!!)
グランとは気まずいまま、町へと向けて、馬車を走らせた。
☆ ☆ ☆
「嬢ちゃん、本当に悪かった」
「い、いえ、恥ずかしいので、出来れば忘れて頂けると嬉しいです」
「ど、努力はする」
「努力はするって忘れられないってことだよね」
「~~っ」
無事に町に帰って来て、グランと変な空気を無くそうと話していると、ココナが余計なことを言ってきた。
お陰でソフィアの顔は真っ赤だ。
「忘れる!忘れるから!な!」
「は、はい。信じてますので」
「なんなら俺の尻を見てもらって構わねぇ!!」
「それは遠慮します」
グランの言葉にソフィアはいきなり冷静になり、冷たくいい放った。
「ま、まあ、今後も贔屓にしてくれよな」
「はい、その時はまたお願いします」
「じゃあね。おじさん」
「あ、ああ、またな!」
俺達はグランと別れ、クエストの報告に学校に向かう。
「ココナは忘れないでもいいよね」
「出来れば忘れて!!」
(流石に女の子同士でも恥ずかしい物は恥ずかしいんだな)
俺はそんなことを考えながら、ソフィアの後ろを付いていった。
☆ ☆ ☆
「はい、お疲れ様。思ったより早かったわね」
報告するとセリカが笑顔で迎えてくれた。
「ロックバードって思ったより弱かったよ」
「ふふ、きっとあなた達が強くなってるのね。それよりソフィアちゃんはどうしたの?顔が赤いような気がするけど」
「実はね」
「言わないでいいよ!」
ソフィアはココナの口を塞いだ。
「本当に仲が良いわね。はい、これが報酬ね」
「ありがと!」
「あ、ありがとうございます」
2人はセリカから報酬を受け取る。
「そうだ。2人共、ジャネットのことって何か知らない?」
「ジャネット先生なら仕事で数日空けるみたいなことをメモに書いてありましたよ」
「・・・メモで?」
「はい」
セリカは思案顔をする。
「そう・・・わかったわ。ありがとう。2人共、ゆっくり休んでね」
「「はーい」」
こうして、ロックバード討伐のクエストは無事に終わっていった。
☆ ☆ ☆
「失礼します」
「珍しいな。セリカが私の所に来るとは」
セリカはディケイルの所にやって来ていた。
「ジャネットのことなんですが」
「ジャネット?」
「はい。何か任務みたいの与えたりしました?」
「いや、これといって任務らしいものは与えてない。あるとすれば専任教師の件だけだ」
セリカは「やっぱり」と心の中で思った。
「ディケイル様、ジャネットを探すのを手伝って頂けないでしょうか」
「どういうことだ」
「実は」
セリカは自分が知っているジャネットのことを話す。
その内容はリアンが考えていたことと同じで、嫌な予感がしていることだった。
ただ、嫌な予感だけでディケイルが動くかどうかはセリカにはわからない。
だから、セリカは自分の考えと思いを思いっきりぶつけて行くのだった。
☆ ☆ ☆
(セリカの奴、感づいたか)
俺はゆったりとしながら、別れ際のセリカの様子を思い出していた。
「リアン、気持ちいい?」
俺の後ろではソフィアが俺の身体を隅々まで洗い始めていた。
「今日は砂埃が多い場所に行ったから、汚れちゃってるね」
いつもは軽く流して終わりなのだが、今日は細々と洗ってくる。
あまり変なところを洗わないで欲しい。
「そうだ。こうすれば私も一緒に洗えるかな」
「にゃっ!?」
ソフィアは俺を泡だらけにした状態で抱き上げ、自らの身体を俺の身体で洗い始めた。
ソフィアの胸の隙間に身体がはまったり、脚の付け根とかに身体を擦り付けられたりして、色々とまずい。
「ん~・・・やっぱり洗いづらいか」
(当然だろ!)
俺は何とか理性を保った。
その後、泡を洗い流してもらい、一緒に湯船に浸かり、のんびりとした時間を過ごしていった。
☆ ☆ ☆
「やっとだ・・・やっと・・」
学校の練習場では1人の男子生徒が達成感に満たされていた。
「やっとこの魔力にも慣れた。やっとこのレベルの魔法を使えるようになった」
男子生徒はある力をある者から分けてもらってから、その力の扱いを毎晩のように練習してきたのだ。
「これであの女に・・・ソフィア・ミールに復讐が出来る!」
男子生徒の名前はヘンリー・ヘイグ。
以前、模擬戦の時にソフィアに負けた生徒だ。
ヘイグはソフィアに負けて以来、悪魔の子に負けた弱者という烙印を押され、仲の良かった友人にもバカにされ、孤独になってしまったのだ。
「これで勝てる。今度こそ勝って、俺の力を、俺をバカにした奴等に認めさせてやるんだ」
ヘイグはそう呟きながら、練習場を後にした。
ヘイグの服の下、二の腕辺りには呪印のようなものが不気味に光っているのだった。
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