第7話
(こういう時は自分が猫であることに感謝だな)
俺は途中でソフィアを見失ってしまったが、猫の嗅覚でソフィアの匂いを辿っていった。
そして、階段の裏の物置みたいになっている場所で、ソフィアは膝を抱え、静かに1人で泣いていた。声を出していない分、余計に孤独な感じがする。
俺は近くまで行くが、ソフィアはまったく気が付いてない。
「にゃあ」
「っ!?ってリアン」
最初、ソフィアは驚いたが、俺だとわかると、安心した顔をする。
「・・・ぐす、リアン、おいで」
俺はとことことソフィアの目の前に行く。
すると、ソフィアは俺を抱きしめ、また泣き始めた。
「ごめんね。こんな出来の悪いご主人様でごめんね」
「・・・・・・・」
ソフィアは出来損ないの自分が俺と使い魔契約をしてしまったことを、悪く思っているようだ。
ただの猫に対してなのに、ソフィアは心の底から申し訳ないと考えているのがわかった。
だけど。
「にゃう!(違う!)」
「え?」
「見つけたわよ。ミールさん」
「あ、先生」
俺が猫なりに励まそうとしたら、ジャネットがソフィアを見つけ、声を掛けてた。
「あら?その子に先を越されてたのね」
ジャネットは俺を見てくすりと笑った。
「・・・先生、私は」
「出来損ないなんかじゃないわよ」
「いえ、でもあれが私の全力で・・・」
ソフィアは皆の前で見せた自分の魔法を笑われたことを再び思いだすと、目に涙を溜め始めた。
「出来損ないなんかじゃないわ。だって、ミールさんの魔法は障壁が張ってある筈の壁を焦がしたんだから。普通学生はあんなこと出来ないわよ」
「・・・・・・・・え?」
(ジャネットも気が付いていたのか)
ソフィアのあのひょろひょろなファイアボールは、的には当たらなかったが、他の生徒がどんな魔法を使っても傷一つ付けられなかった壁を焦がしたのだ。
それはとても驚異的なことである。
「私は貴方を、いえ、貴方達を最高の魔法使いに育ててあげるから、これからしっかりと学びなさい」
「っ・・・はい!」
ソフィアは涙を拭って、力強く返事をした。
「ミールさーん!!どこ行ったのー!!って速い速い速いっぶつかる!!」
廊下の方からココナの声が響いてきたと思ったら、物凄い勢いで空を飛ぶように通り過ぎていき。
「ぎゃあぁぁぁあああぁぁぁぁ・・・ぶっ!!」
遠くの方で何かが壊れる音がすると共にココナの声が途切れた。
「ユースフィアさんも問題大有りね。怪我とかしてないといいけど」
(いや、あの速度で何かにぶつかったら普通に怪我するだろ。下手すると死んでるぞ)
「ほら、ミールさん、行くわよ」
「はい!」
ソフィアは調子を取り戻し、ジャネットの後を付いていこうとする。
「リアン、おいで」
俺はソフィアの肩に乗り、笑顔のソフィアの横顔を見る。
(・・・出来るかわからないが、この笑顔のためにやってみるか)
俺は前例の無いあることを思い付き、ソフィアのためにそのことを実践する決心をした。
☆ ☆ ☆
「ん~・・・すぅ・・・すぅ・・・」
夜更けのソフィアの部屋では、ソフィアがベッドの上で規則正しい寝息を発てていた。
俺もいつもならベッドの隅で丸くなって寝ているのだが、今日はソフィアが寝ている間にあることを試しておきたかったことがあった。
(・・・よく寝てるな。これなら多少のことでは起きないはず)
カーテンも閉められいるので、部屋は真っ暗だが、そこは猫の夜目が効いており、普通に見えていた。
俺はソフィアのおでこに肉球の付いた手を置く。
(・・・・・・よし。ソフィアの魔力の流れが分かる。でも魔力気管は上の方にはない・・・か)
掛け布団から出ている場所は頭だったので、試しにやってみたが、魔力気管から遠かったので、試したいことは上手くいかなかった。
(・・・気か進まないがやるしかないか)
俺はソフィアの掛け布団の中に潜り込むことにした。
中はソフィアの香りで充満していて、理性を持ってかれそうになるが、そこはなんとか頑張って堪える。
(悪いな)
俺はソフィアのワンピースタイプのパジャマのスカートの裾をおへそが出る辺りまで捲り上げる。
結果として、パンツも丸出しになるが、気にしないことにする。
(・・・ここからなら出来そうか)
俺はソフィアおへその少し下辺りに手を置く。
そして、使い魔契約の魔力の繋がりを意識して、ソフィアの魔力気管に意識を近付ける。
(やはり物凄い量の魔力を溜め込んでる。しかも、全属性分。これじゃあしっかり制御しないと
ソフィアが弱い魔法しか使えない理由。
それはソフィアの魔力気管が生み出す魔力が全ての属性において多過ぎるからだ。
普通はある属性が多かったら対の属性の魔力は生成されないのだ。
それなのに、ソフィアの魔力器官の場合は全て属性において、多過ぎると言っていい程の魔力を生み出していた。
ソフィアは自分の生み出す魔力を制御しきれずに、違う属性同士で起きる
これを解決するには、魔力の制御を練習するしかない。
だが、魔力の制御は人それぞれ違うから、簡単に教えられる物ではない。
だけど、使い魔契約した俺ならば、もしかすると教えられるかもしれないのだ。
使い魔契約はお互いの魔力をパスを繋いで、お互いの魔力を分け合うシステム。
動物にも人間程ではないが、少量の魔力を有している。
使い魔となった動物は知識が上がると言われているのは、主人の魔力が流れてくる過程で、情報や知識も流れるからと俺は考えている。
(でも俺の姿は猫だが本当は人間だ。自分の魔力量は人間の時のままだし、知識もそのままだ。魔法の発動には魔法名を唱える必要があるから使えないが、魔力の制御だけなら出来る。それなら)
俺はソフィアの中の魔力の制御に試みてみる。
「ん・・・」
「・・・・・・・」
俺が少しソフィアの魔力を制御すると、小さく声を洩らす。
(起きたか?)
「・・・すぅ・・・すぅ・・・」
ソフィアはまだ規則正しく呼吸をしていた。
(よし、寝てるな。続けるか)
俺はまた制御を開始する。
先程は軽く魔力の流れを軽く弄っただけだったが、次は魔力の属性を分けてみることにする。
「・・・んぁっ!」
「っ!?」
ソフィアがいきなり嬌声を上げた。
「・・・・・・すぅ」
(よかった。起きてないか。今日はこれぐらいにしておこう。変な感じになってきたし)
俺はそっと掛け布団から抜け出し、いつものように枕元で寝始めた。
☆ ☆ ☆
翌朝。
「・・・ん?」
ソフィアは違和感を感じて、目を覚ました。
「んー・・・冷たい」
何か知らないが、下半身が冷たく感じたのだ。
ソフィアは手で触って確認すると、パンツの一部が濡れていることに気付いた。
「お漏らしじゃ・・・ないよね?」
お漏らしなら布団も濡れているはずだが、そんなことない。
「・・・ってことは・・・・・・~~っ!?」
ソフィアはもう一つの可能性に気が付いて顔を真っ赤にする。
(待って私!!そんな変な夢なんて見てないよね!?ぜんぜん記憶にないよね!?あ、でも夢は覚えてるときと覚えてないときがあるって聞くし・・・)
「んにゃ?」
「っ!?」
俺が目を覚ますと、ソフィアは顔を真っ赤にして、こちらを見てきた。
「何も濡らしてないよ!!」
「にゃ?」
ソフィアが慌てている理由はわからないが、特に体調も悪くなっていないみたいなので安心した。
ただ、ソフィアが着替える時に、お尻をこちらに向けて丸出しのまま、自らのパンツを長い間見つめていることが気になった。
(いや、いつもは着替えの時は見てないぞ。ただ様子が少しおかしかったから見てしまっただけで)
準備をした後、いつものようにソフィアと一緒に学校へ向けて歩き出すのだった。
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