意識低い系数学教師山田のため息。

俺は今後悔している。

山田ユウタ数学教師始まって以来の後悔だ。

どのくらいの後悔かって?

3分に1回ため息がでるくらいだ。

で、30分が経ったから俺は10回ため息をついたわけだ。


あぁ?二酸化炭素削減に協力しろだと?


そんなのは春沖チエに言ってくれ。


もし俺のため息で、日本が京都議定書に背くほどCO2が増加するならあいつは国際的な問題児だ。

だがな。

俺はチエのためにこれだけは弁解してやる。

いいか。


人間の呼吸で出るCO2は元々大気に存在してるCO2だからそもそも地球温暖化に影響はない!

(ちなみに。人間の呼吸で吐かれる二酸化炭素の割合は3〜5%だ。

人間の吐く息の80%を占めるのは窒素だ。

ちなみに酸素は20%だ。)


だから春沖チエはただの

数学ができない問題児なだけだ。


だからって先生たちを悩ませるなよ。

教師の鬱は年々増加傾向だ。


だから頼む。この通りだ。

『もっと尊敬と愛と理解を持って接してください。お願いします。』


じゃないと、、、

国の医療費負担が増えて

俺の年金が減るだろ?

人ごとじゃない。お前らの分もだぞ。



俺は30分前に春沖チエと話したわけだ。

「おいチエ。」

「ん?」

「お前進学したいのか?就職希望か?」

「チエ進学。」

まじか。

「どこ受けて何したいんだ?」

「チエね、短大行って幼稚園の先生になりたい。」

おうおう。

これだけは救いだ。

幼稚園児に数学は必要ない。

「で、どこ大受ける?」

「チエねー迷ってるんだけどね。トコ◯短か東◯短」

よしよしさすがだ。

お前はいい子だ。


チエは自分が数学が苦手だということを心得ている。

だから入試で数学がない学校を選んでいるわけだ。

「先生が先生っぽい!なんで?」

、、、。

「チエ数学できたいんだろ?」

「うん。チエできたい!」


で、俺の次の課題はこれだ。

チエが数学をどの程度できるようになりたいかだ。

「どんくらい?」

頼むから

頼むから、、、。

国公立入試レベルとか

成績5だとか望まないでくれ。

俺にそんな努力させないでくれ。

俺は心底思うわけだ。


「チエ数学3くらい欲しい。」

きたーーーー(°▽°)ーーーーー!!

よし!

よし、よし!!

やったな俺。

3程度なら授業態度が良くて、そこそこできれば3になる。

テスト正解率でいうと60点から70点くらいだ。


「先生3くれる?」

「やらねーよ。プレゼントみたいに言うな。」

「なーんだ。」

「お前の頑張り次第だぞ。」

「うんじゃあ、チエ頑張る!」

「いつから数学できないんだ?」

「チエねぇ、中学からできない。」

「中学の最高点数は?」

「45点。チエ頑張った!」

、、、。

「お前入試良く受かったな。」

一応この学校は進学校だ。

入試項目も数学が入っている。

「チエ推薦。」

、、、そうか。

掴めたよ。

何がって?

中学教師の思惑どうりに俺は転がされているわけだ。

詳しくは悟れ。


「チエ、中学からわかんない。だから山田先生何語喋ってるかわかんないときある。先生ジャポネ?」

、、、ジャパニーズって言えよ。

ジャポネって、、、

お前の方が怪しいよフランス人か!


つまりだな。

チエの数学はそもそも高校数学を始める段階にいないわけだ。

x軸が俺の教え。

y軸がチエの学力。

0が高校数学出発点だとしたら、、、。

チエの学力は中学レベルのマイナス地点だ。

俺がどんなに教えたってaの値はマイナス。

わかるか?


数学っていう学問は

基礎に応用、その応用の応用、、と階段のように進んでいく。

だから基礎の部分でつまづいたチエにとって

全く理解できないものにしかなっていかないわけだ。

三角形の内角の和→三角関数→三角関数に円が付いてくる、、、みたいなもんだ。


マイナス1に何をかけたらプラスになるか。

-1×□=+1 □の値は?

答えは-1。

要はマイナスの値を示す「中学数学」をかけろって事だ。

「チエとりあえず中学の数学からだぞ。」

「うん!チエ頑張る。」

「お前部活は?」

「ない。チエ辞めた。チエいつもひまー。」

“ひまー”じゃねーだろ。

その“ひまーな”時間を社会に貢献しろ。

バイトとか、勉強とか。


あ?

いーんだよ。

バイトが校則違反でも。

うまくやれよ、んなもんは。


「だから先生が数学教えてくれたら嬉しいな」

なんだその上目遣いは!

まるでペコちゃんだ。

チキショウ。

かわいいじゃねーか。

「じゃあとりあえず月、水の放課後な。」

「いいの!?」

自分でもらしくないと思っている。

心底な!

「だって先生、残業嫌いじゃん。」

、、、。まーな!

なんで知ってんだよ。

「お前数学できたいんだろ?」

「うん!チエできたい。だから頑張って先生!!」

お前がな!!!


意識低い系数学教師

山田ユウタ29歳。

まさかのサービス残業を買って出るという

歴史的過ちを犯す。


で、今に至る。

わかるか?


あ、お前今。

自業自得だって思っただろ?


そーだよ。自業自得。

しかし俺も教師だ。

チエの“頑張りたい”を知っていて

何もしないわけにはいかないわけだ。

教師っちゅーのは

環境を与えることしかできない。

やるかやらないか。

できたかできなかったかは本人次第だ。


俺は不覚にも

チエの成長が見たいと思った。

まったくらしくない。

まったくらしくないのだが、、、

俺は男だ。

女の可愛さに弱い。



俺は“女の可愛いさに弱い男”

山田ユウタ。3-Aの副担任だ。

担任じゃなくてよかったと心底思う今日この頃。

「山田先生おはようございます。」

「おはようございます、今井先生。」

今井モモ先生は3-Aの担任だ。

美人の32歳。独身。

結構熱血。

だから俺は助かっている。

なんでか?

熱血タイプは、自分でなんでもやっていく。

だから俺の仕事は減る。

俺は全く逆のタイプ。

俺はモモ先生が困ったときに動く。


その方が男として好感度いいだろ?

助けてー!ってときに助けるヒーローになれるだろ?


あ、お前俺のことバカにしただろ?


でその“助けてー”が来たわけだ。

「山田先生、ちょっとご相談が。」

「はい。」

俺は人けのない給湯室に呼ばれた。


お、お、?

これはもしや、!

なんてちょっと期待する俺。

「それが、、、3-Aの畑中君なんですが。」

、、、なんだ。

仕事の話か。

「畑中が何か?」

「昨日の進路面談で、、、。」


畑中大輔。

成績そこそこ。

授業態度、、、中の下。

陸上部部長。

で、コイツがどうやら進路に対して

「俺は進学もしないし、働かない」

と言っているらしい。


とっとと、そこそこな進路で卒業してほしい俺ににとってなかなかため息の付くことを言ってくれやがる。


モモ先生が言うには

どんなに熱血に人生を説いても揺るがない

中2病疾患な姿勢らしい。

「山田先生から少し話をしてくれませんか?」

「ああ、はい。わかりました。」

モモ先生がちょっとウルウル目だ。

男が女を泣かせるもんじゃない。畑中め。

「大丈夫ですよ。話せばなんとかなりますって。」

「はい、、力不足ですみません。」


放課後。

「畑中、ちょっとこい。」

「あー?なんだよ。ユウタ。」

、、、。

俺はお前の友達になった覚えはない。

「まーいいや。ちょっと座れ。」

「俺部活あるから早くしてくれよ?」

俺だって早く帰りたい。

「お前進路どーすんの?」

「あー?なに?ユウタもモモちゃんみたいな説教かよー。」

俺は今最高に腹立たしい。

なんでか?

チキショウ。

俺だってモモちゃんと呼びたい!

「まーいいや、んでお前はなんで働きたくねーの?」

「俺宝くじ当てて、一生遊んで暮らす。」

、、、想像以上になかなかの末期だ。

「ドリームジャンボとかサマージャンボとか当てて。1等とか当てまくって遊んで暮らすから。」

、、、。

「何して遊ぶんだ?」

「ゲーセンとか、海外旅行とか。」

、、、。

ここで俺は現実を見ろとか、働けとか言わねーよ。

夢を見ることはいいことだ。

「当たるとおもうか?」

「おう!俺今年5万当たったから。すげーだろユウタ!」

、、、。

「そうか。応援するよお前の夢。」

「お!ユウタさすが!!わかってるねー。」

わかってるぞ、俺は。

わかってる、、、お前がどんなに緩いかな!!


「お前、チョ◯ボール知ってるか?」

「知ってるよ、、。?」

「俺は29歳だが。俺はスーパーに行くと毎回、60円のあのお菓子買ってしまう。」

「お、おう、、。」

「だがな畑中。俺は29年金のエンゼルを見たことがない。お前はあるか?」

ちなみに銀もエンゼルも見たことがない。

「ねーな。」

「あるサイトではな金のエンゼルが出る確率は1/1500だという。1500個に1個だ。」

「、、、。」

「◯永製菓の言い分はこうだ。

懸賞によって提供する景品類の総額は、当該懸賞に係る取引の予定総額の100分の2を超えてはならない」


言ってる意味わかるか?


「おまえそこそこできるからわかるだろ?

チョ◯ボールの売り上げがないと懸賞に当たる確率は下がる。それが世の中のビジネス。」

「買わなきゃ当たらない。買っても当たらない。でもいつか当たるかもしれない!

これがギャンブルラーの心理だ。」

俺はチョ◯ボールに対する情熱に熱くなって、机を拳でたたいた。

「お、う、、。」

冷静になろう。

畑中がビビってるじゃないか。


「宝くじの1等が当たる確率は1000万分の1だ。これは頭に雷が落ちる確率に等しい。」

「日本人の1人当たりのトイレットペーパーの消費は年間約50ロールだ。1回の消費が15cmだとしよう。

トイレットペーパーを宝くじで作ったとしてだな。お前は500年ケツを拭かねーと当たんないくらいの確率だぞ。」

「、、、。まじか。」

「エンゼルも当たんねーのに宝くじ当たると思うか?約束された報酬なんて無いに等しい。」

「、、だな、、。」

「わかったらさっさと働け。

言っとくが時給なんかで働くなよ。お前の一日はどう頑張っても24hしかねーから。たくさん稼ぎたかったら知識を金に変えるか、スキルを金に変える方がよっぽど効率よく稼げる。時給じゃない就職するか知識やスキルのための学校に行くかはお前の選択だ。」

「、、、、。」

「わかったらよく考えろよ。お前の人生。」


あ、お前今。

サービス残業を買って出たくせに。とか思っただろ?


まーな!でもな。

学校教師という職業は食いっぱぐれはしない。


宝くじを買うより

生徒に現実を教えていた方が

よっぽど確実に金になる。



と思っている。


この後畑中大輔は

専門学校を志望した。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る