数学ができないチエちゃん。
もちもん
チエちゃんはYDK
教師という職業はブラックだ。
部活も、放課後の残業代も発生しない。
おまけに土日の部活の遠征だのと、全く休みがない。
なんで俺は教師になんてなったんだろう。
とつくづく思う俺は山田ユウタ。29歳。
俺は今なにしているか。
数学の準備室で全くできの悪い春沖チエの補習をしている。
こいつは本当にできが悪い。
一年の時はテストの答案に名前を書き忘れる。
Aくんが学級委員になる方法は何通りかという質問に「3通り」とかいてある。
わかるか?俺のため息のつきどころ。
計算する枠に
・あみだくじ
・じゃんけん
・多数決(選挙)
ってかきやがる。全く数を学ぶ頭ではない。
チエは3年に上がって、まぁまぁ50点そこらは取れるようになったが。
小テストでまさかの0点取りやがったから、流石に俺はチエを呼び出した。
ため息しか出ないぜ。
腹がたつのはチエが、数学以外は優秀だということだ。
あ。
今お前、俺の教え方が悪いと思っただろ?
いいか。
勉強なんてもんはやらされてやるもんじゃない。わかったら人のせいにするなよ。
なんていいたいが。
こんなことをおっぴろげいうもんなら俺は学校から譴責もんだ。
ちなみに悪いが、クラス平均は80点台。
俺が悪いわけでは決してない、、、と思う。
「先生?」
「なんだできたか?」
「もうちょっと。」
「できたら言えよ。」
「うん。」
チエは素直だ。
なんでも「そだね。」とか「うんうん。」という。
純粋とはこいうことを言うのだろう。
天然そうに見えて、集中してる時のまっすぐな顔はギャップを感じるくらい凛としていて驚かされるが。
「先生?」
「できたか?」
「できたよ。」
回答を見る。
解けている。
「やればできんじゃん。」
「うん。チエはYDKだから。」
YDKとはJK用語(?)でやれば出来る子という意味だ。
回答は20問全て正解。
よしよし。
これで俺も帰れるぞ。
やったな俺。
まーおんなじものをやらせたし、解き方は最初に全て教えたからできないはずがない。
「よし、もう17:30だからな、気をつけて帰れよ。」
「うん。先生ありがとう。」
チエはカバンを持って立ち上がる。
「先生?」
「あ?」
「残業代。」
と言ってチエが飴を3つくれた。
「ああ?さんきゅ。」
チエは帰っていった。
まぁチエのこう言う天然というか素直なところが可愛いとおもう。
まて!
いいか。
教師たるもの、
これは絶対に恋愛感情ではない!!
俺は人間より
どちらかといえば数学のロマンが好きだ。
定理だとか
数学の真実を見いだす感じが好きだ。
世界に蔓延する色々な不思議な事柄を、数字として表現しようとしている感じ。
世の中全て数字でできていると思える。
、、、語ってしまった。帰ろう。
数学の時間
チエは今日もノートを取っている。
前にノートを回収してチェックしたがコイツはちゃんと勉強の仕方を心得ている、、、と思う。
ではなぜチエはできないのか?
x軸が俺の教え方、y軸がチエの学力。
全く比例しないのはなんでか。
やっぱ俺のせいか?
「今日は22日だから23番新垣。」
「先生!22日なら22番の長島あてろよー!」
「気をぬくな。さっさととけ。」
「あーい。」
「最後に今日のところの確認だぞ。練習問題解いてもってこいよ。」
と言って5問の問題をやらせる。
「できたやつから終わり。」
で。結局最後はいつもチエだ。
しょうがないから声をかけてやる。
「チエできたか?お前が最後だぞ。」
「うん。」
かんばって考えているらしい。
振り向きもしない。
5問中2問しか解いてない。
「チエ、いいぞわかんなかったら帰りに出せよ。」
「うん。」
こっちくらい向いて返事しろよ。
と思う。
全く最近の高校生は。
勉強よりも敬語とかマナーとか目上に対する敬愛を学べ!
と心底思っているジジくさい俺だが。
放課後。
「先生?」
「ん?お、チエできたか?」
「できた。となりの梶くんが教えてくれた。」
「おお、よかったな。」
「うん。」
と言ってノートを持ってくるチエ。
「正解。頑張ったな。」
「うん、チエYDKだから。」
「よし、じゃあ気をつけてかえれよ。」
「さよなら先生。」
チエはみたところ友達も多くて、なかなかうまく周りと付き合っているようだ。
全教科(数学以外)は8割9割は点数もいいらしい。
だから俺は教育指導課に
“数学だけできない春沖チエをなんとかしてくださいよ、もったいない”
と言われるわけで。
この“もったいない”と言う言葉はまぁ大人の事情。
「いい大学いい就職先に入れたら学校の好感度が上がるデータになる」わけだ。
だからチエの数学をなんとかすればあいつはもう少しレベルの高い進学先や就職先を狙えるって話。
正直、俺には全く興味も関係もないことだ。
俺は、チエが望んでなければ頑張らせる必要はない。と思っている。
本人が望まないことをやらせたって苦痛なだけだろ?
今お前、それでも教師かよ。て思っただろ?
だいたいな。
義務教育じゃねーんだ。
勉強したいやつが来るとこだろ?
だからやりたくないやつはいいんだよ。
で、大学行きたいとか
高校課程は取りたいだとか
目標があるやつは応援はするさ。
、、、50%の全力でな!
要は
環境は与えてやっても、結局やるかやらないかは自分たちの問題だ。って話。
だから出来るだけ数学が楽しいと思わせる努力はする、、、。50%の全力でな!
後は本人次第。
まぁ頑張れよ。
今お前、俺が担任じゃなくてよかったって思っただろ?
奇遇だな。俺もだ。
進路の調書だの、三者面談だの、修学旅行だの、、、考えるだけで鬱だ。
幸い俺は担任ではない。
3-Aの副担任だッ!!
しまった。ドヤ顔で熱くなってしまった、、、話を戻そう。
チエが結局どうなりたいか、だ。
しょーがねーから明日聞くことにする。
「おはよ。チエ」
廊下にいたチエに声をかけた。
「先生だ!おはよう。」
チエは“ございます”と言えないJKだ。
ございますが言えない生徒は、注意されないからいいと思ってる。、、、だろ?
ではなぜ注意しないか教えてやろう。いいか?
教師だって人間だ。気持ちいい朝を迎えたい。しかしそれ以上に
エネルギーを使ってまで朝から注意したくない!覚えとけよ。
「おいチエ。」
「ん?」
「お前、数学できたいって思ってる?」
「あはは。」
あははじゃねーよ。
「思ってるよ。」
「そか。じゃあ俺も頑張るわ。」
「うん、頑張って先生。」
お前がな!!!
こいつを出来る女にするしかないらしい。
俺は重い腰を上げることを決意する。。。。
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