第四話  トラックに轢かれてエンヤコラ

テーマ:トラック転生

第四話 1

「なあ、トラックに轢かれると異世界に転生するのか?」

 なんか本をぺらぺらとめくっていた松任谷が、唐突に言った。どうやらラノベを読んでいたらしい。

「テンプレというやつだな。前は鉄骨が落ちてくる方が多かったような気がする」

 気乗りのしない声、しかしきっちりと返すのが相楽である。

「だいたい、そんなにトラックで事故起こすもん? 運転のプロだろ」

「そりゃ人間だし、仕事の疲れや周りの状況、その他の悪条件が重なるってことはあるだろう。察してやれよ」

「いいや納得できないね!」

 (面倒くさいなこいつ)という目で相楽が、松任谷に向けて座り直した。

「じゃあどれくらい事故が起こってるのか考えてみようか。調べ物はおまえに任せる」

「お前、まだガラケーだもんな」

「うるさい。まず一年間の交通事故死者数」

「2017年度で、3,694人。 うーん、多いのか少ないのかよくわからん」

「次、死亡者の年齢構成。確か半分以上は65歳以上の高齢者だったはず……」

「確かにそうだな。まあ、転生するのはギリ24歳以下と考えるとだいたい10%前後だな」

「該当する死亡者は370人としよう。計算めんどくさいし。次、事故における車両の種類」

「トラックは軽貨物と貨物合わせて2割程度、20%とみなしていいか」

「というわけで、トラックに関わる交通事故死亡者は74人だ。当然死亡者の中には運転手も含まれるわけで」

「状態別で言うと、歩行中が36%、自動車の中にいたのが32%。自転車が13%。残りはバイク」

「自転車と歩行中合わせて50%くらいか。つまり一年間でトラックに轢かれて死亡したのは大雑把に考えて、37人ってことになる」

「微妙な数字だな」

「10年で300人超えるって、全部転生してたら村がひとつできそうだ」

「神様がそんなにホイホイ転生させるとは思えないけどな」

「で、この話のオチはどうする」

「何言ってる、オチなんかないぞ」

「そうか」

「そうだ」

「お前が轢かれてしまえ」






                    終

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る