第2話 The RED room
地響きが止み、光がだんだんと収束していく。そこにあったのは今までの白く広い空間等ではなく、ただただ、赤い空間だった。先ほどまでとは違い、今度は床も壁もある。壁は僕を囲うように円状に広がっており、半径100mといったところだろうか。
チュートリアルを始めると言っていたはずなのに、何も起きない。壁際まで行き、真っ赤な壁に触れてみる。見た目はコンクリートのようだが、少し暖かく湿っている。また、僅かな弾力があり、まるで何かの肉のような……。
気分が悪くなりすぐに手をどけ、手のひらをぬぐう。触っていた時間は数秒、なのに全身から汗が吹き出し、息も荒くなっている。
再びゴゴゴゴという地鳴り。辺りを見回すと、中央のあたりに光が差している。
僕と同じように記憶を失くした者がいて、そいつがこの空間にやってきたのだろうか。
そう思い、光に近づく。
しかし、光が収束し、中から出てきたものは、異形の化け物だった。
驚きのあまり腰がぬける。隠れる場所を探すも、辺りには壁以外何もなく、隠れられそうな場所はないようだった。
いや、まて。僕の知識によると異形のものでも言葉が通じる場合があるらしい。化け物も僕がすごい勢いで後ずさったのが堪えているのか、さっきから屈んでクラウチングスタートのような体勢になっている。
「こ、こんにちはー。元気?」
勇気を出して呼びかけてみる。化け物は何の反応もなく、同じ体勢のまま止まっている。
――いや、そうだよね。やっぱり初対面の人に怖がられたら誰でもショックだよね。
頭部は獅子、体は筋肉質な人間のようだが全体的に黒く、背中からは蝙蝠のような羽が生えており、悪魔という言葉が相応しいような風貌のそいつも、外見だけで以外と内気な奴なのかもしれない。
立ち上がり、さっきの無礼を謝ろうと一歩踏み出した瞬間。
僕の視界は反転した。
上下が入れ替わった世界で視線の先に見えるのは、頭のない体。あれは、そう。
怒りすぎでしょ、と死にかけていることに実感が沸かず、的外れなことを思う。なんとなく壁が生温かった理由を察したところで、僕の意識は完全に途絶えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます