第2話

 それから、たまごチャンとは時々 会うようになった。

一緒にいると、私も透き通る白さを手に入れたような気がして、とても嬉しかったし、

繊細さも学べて、私にとってはお得がいっぱい。

そして、たまごチャンは いつだってプチな私を励ましてくれる。


「プチトマトちゃんは小さくて可愛らしい!

 その気になれば、直ぐにステキな彼が出来るわよ」

「だったら良いけど……たまごチャンは、彼氏イナイの?」

「イナイ、イナイ」

「嘘だぁ」

「本当よぉ。何かね、見た目と中身のギャップがあって付き合いにくいって、良く言われるの」


 意外だ。

たまごチャンのような清楚で美しい たまごを、ギャップ如きで眼中に入れない何て、

世の中 間違ってる。

私なんか、たまごチャンの友達ってだけで自慢したいくらいなのに。


「やっぱり、私の中身を分かって貰いたいわ」

「中身かぁ……」


 流石、たまごチャン。奥が深い。

私も私を分かってくれる方と お付き合いしたいなぁ。

そうするとやっぱり、私の場合、野菜業界が良いのかな?

中でも、同じトマト業界?


「あぁ! そうだ!」

「どうしたの? プチトマトちゃん」

「あのね、私の友達に、たまご君がいるんですよ。

 同じ業界なら話も合って、良いお友達になれるんじゃないかと。

 私、良く一緒に遊ぶんです。良かったら、今度いらっしゃいませんか?」


 すると、たまごチャンは一層 輝いて頷いた。


「本当!? 是非!

 嬉しいなぁ、プチトマトちゃんのお友達なら、きっと良い方ね!」

「ええ! とても良い方です!」


 紹介しても恥ずかしくはない、たまごチャンとたまご君。

そうして仲良くなってくれたら、皆で遊びに行ける!

でも、考えてもみれば、物見知りな私が仲介役をするなんて……緊張。

いや、たまごチャンとたまご君が仲良くなれるように、私は頑張らなくちゃ!


 そうして ある日の事、私はお気に入りスポットに、たまごチャンとたまご君を連れ出した。

光合成をするには打ってつけの原っぱ。

1人でだって来ちゃう程、私はこの原っぱが好き。

なのに、……雨だ。ポツポツどころじゃない。ザァザァ降り。


「あぁ、残念。これじゃぁ散歩も出来ないわねぇ」


 野菜業界の私は雨も好きだけど、たまごチャン達には参っちゃうだろうな……何か、罪悪感。

でも、気遣い上手の たまごチャンは楽しそうにしてくれる。


「雨を見ながら お話するのも良いよね!」


 たまご君も『うんうん』と頷いてくれる。ありがとう。


 結局、1日中 雨で、傘のある軒先で ずっと話していた。

何故か張り切っていた私は、ペラペラと普段以上に喋ってしまって、

たまごチャンとたまご君は、やっぱり相槌を打つばかりで、

ハウスに帰ってからの私は、やっぱり落ち込んだ。


「慣れない事はするもんじゃないなぁ……」


 仲介って難しい。ソレを痛感した。

たまごチャンとたまご君は、もっとお互いの会話を楽しみたかったに違いない。

そう強く思うのは、帰り際、たまごチャンとたまご君が私にこう言ったから。



『たまご君、カッコイイね! 穏やかだし、仲良くなれそうよ!』

『たまごチャン、カワイイなぁ。守って上げたくなるタイプだね』



 お互いがお互いに聞えないように、そっと私に教えてくれた。

だから、今回の仲介は失敗したわけじゃないんだけど……


「何か、寂しい……」


 私がいない方が、たまごチャンとたまご君はもっと楽しく過ごせたんじゃないか?

って思うから。


「もぅ…子供じゃないんだから…」


 もっと気を使って上げたかったと思うんだ。だから、やっぱり…


「慣れない事はするもんじゃないんだなぁ…」

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