第2話 神様からのギフトは未来視でした

 ――――あぁ、白い世界。夢か。

 それともここは天国なのか。


 さっきオレどうなったんだっけ。

 サーラを庇って狼にやられたんだっけ。


 オレ、死んだのかな。


 異世界にきて、短い時間の間に頭で処理しきれないようなことがたくさんあって。

 整理もつかないまま挙句の果てに会って少しの女の子を庇って死ぬ・・・。


 ――――けど、オレはこれでよかったんだと思う。

 このまま死んで向こうで皆に出会ったら胸を張って誇れる。

 よくやったと褒めてもらえる。

 でも、もう少し頑張りたい。


 てかこんなところで死ぬわけにはいかないだろ!

 これからもサーラを助けていきたい!

 そして・・・エヘッエヘヘヘヘ。


 そして目が覚める。


 ※※※※※※


「―――――――ん、う」


 どこだここは。


 オレはベッドで旅館の服のようなものを纏って寝ていた。

 きれいな白い天井にシャンデリア。


「ど、どこだ、ここは」


 ベッドから上体を起こす。

 部屋には絵が飾ってあったり、花瓶に花がつまれていた。


「どこの高級ホテルだよ・・。てか部屋広!」


 部屋の広さは学校の教室ぐらいあった。

 そうして部屋のものを鑑賞し堪能していると。


「あ!コータ、よかった。目が覚めたのね!」


 様子を見に来たサーラが両手を胸の前で握り、涙目になってオレの目覚めを喜んでくれた。


 はぁ、かわいい。


「我が人生に一片の悔いなき!」


「不快すぎて気持ち悪いのヨ」


「何言ってるのかわからないけど、元気そうでよかった」


 オレは決めポーズをとるが、サーラは首を傾げ苦笑した。


「で、ここはどこなの?」


「私の家よ。傷だらけコータをここまで運ぶのリアも私も大変だったんだからね!治療魔法もすごくがんばったんだからね!」


「それはすまん。んで、ありがとな」


「!…うん」


 身体に傷や痛みがないのはその治療魔法のおかげなのだろう。


「え、まってサーラの両親は仕事でこの家にはいないんだよな」


「?。ええ、そうよ」


「てことは、この家にいるんは俺とサーラの二人きり・・・グヘヘヘ涎が止まんねえぜ」


 そう!オレももう高校生!

 思春期のオレと美少女が同じ屋根の下にいるというこの神的なシチュエーション!

 あぁ、神様仏様サーラ様ー!!


「大丈夫、この家には使用人がいるから安心よ」


「もともとする気もなかったけど、そこ安心されると傷つくな!!」


 使用人?え、なんなの人雇ってるの?サーラってまさかお嬢様!?


「「サーラ様、コータ様。朝食の準備ができました」」


「サーラに続いて美少女BとCが現れた!なんなんだこの世界はぁ!!」


「なんでアタシは美少女じゃないのヨ!!」


「んー、お前は美少女というより美幼女?」


「幼女じゃないのヨ!アタシはあんたより年上なのヨ!


 少し聞き捨てない台詞があったような。

 ファンタジー世界のお決まりのパターン!精霊さんの見た目は子供だが何百歳という設定が鉄板なのだぁ!


 そんな生意気ロリ精霊の事より美少女BとCだ!


「シャルティアと申します、コータ様。御無事で何よりです」


 な、なななんという美少女!いや、美女と呼ぶべきか。濃い緑色のポニーテールに綺麗な薄緑の瞳!


 歳はそこそこ変わらないと思うが、年上のお姉さんのような空気をまとっていて、そして気が強そうだ!誰もが「ついていきヤス。姉貴ぃ!」と言いたくなるような人だ。

 簡単にまとめるとすればクールなお姉さんってとこだな。


「全部声に出ているのヨ」


「あ、あの!わ、私、はイリスと申し、ます。…コ、コータ様も、ちょ、朝食ご一緒に・・・どう、です・・か」


 おおっと!今度は逆に気が弱そうな金髪美少女!このミディアムな感じたまんねぇな!極度の人見知りでありながらも必死にお仕事頑張る!

 そして守ってあげたくなるような。目を離せておけないような絶大のドジっ子オーラ!

 しかも、サーラの胸より一回り大きい!!


 あぁ、異世界バンザーーーーイ!!


「だから全部声に出ているのヨ!」


「おっと、オレの熱い魂のソウルを聞いてしまったな。それ以上聞かないほうがいい」


「え、どうして?」


「――――火傷するぜ子猫ちゃんたち」


『・・・・・・・・・・・・・・』


 思わず語尾にキリッっと効果音を付けたくなるような決め台詞にみんなの視線が痛い!は、恥ずかしい!決め台詞を言ってから何秒たった!?1時間ぐらいたったんじゃないか!?


「さあ、朝食にしましょう」


「そうね。さ、行きましょ」


「ねえ。悪かったから何か言って!それじゃないと僕寂しいし虚しいよ!?」


「よ、よかったとお、思い・・・ます」


「フォローになってないフォローをありがとうよ!!」


 イリスの気遣いはありがたいが逆に哀れに思われたようで胸が痛い!


 そうして、朝からちょっとした事件が起こったが朝食の場所に出発する。


「なあ、薄々思ってたんだがサーラって貴族かなんかのお嬢様なのか?」


「まあ、大体そんな感じね。お父様は王の下で働いてるの」


「へえ、そうなんだ。やっぱ王様って偉いんだな」


「はい。ですが、現国王様が不治の病にかかっており国中が大騒ぎしています。


 と、今の王国の現状をシャルティアが説明する。

 え、ちょっと待てよ。

 国のトップが死ぬってだいぶひどい事態なんじゃないかこの国。


「え、やばいじゃん。どうすんの」


「そして今新たなアルグ王国国王を決めるため4人の候補者の選挙を行っているのです」


「へえ、そうなんだ」


「サーラ様はその候補者の内の1人なのです。


「へえ、そうなんだー・・・って、ええええええぇ!?」


 オレはサーラに振り向き人差し指を震わせながら指した。

 何でこんな能天気なやつがそんなすごいやつなんだよ。


「何かわからないけど絶対に失礼なこと考えてるのに違いないのヨ」


「え、そうなの?コータひどい」


「いやいや、こんなかわいい子が国王になるとイヤらしい目で見てくる輩がでてくるんじゃないかと思いまして」


「そんなこと言っても許しません!」


「それにそんな目をむけるのはアンタぐらいなのヨ」


 チッ。このロリ精霊。

 勘だけは親父並みに鋭いぞ。

 ちなみに親父はオレがエ〇本を読んでるときに急に部屋に入ってきたときがあった。その時オレは本を隠して、勉強のフリをしたが親父はオレを見て「青いな若造よ」と言ってニヤニヤしながら部屋を出て行った。見られてないのにバレてあの時は、死ぬほど恥ずかしかった。


「でもその選挙って具体的にどんなことをするんだ?」


「半年前始まった選挙からの5年間の間に人や国のためにした活動内容の報告やその他もろもろです」


「ほえぇ、で今のサーラ一団の状況は」


「ほかの候補者と比べて少し劣勢です」


「その心は?」


 と、聞いてみた。気になるから仕方ないよな


「サーラ様はこの半年間、何もしていないことですね」


「お前やる気あんのか!!」


 王の候補者というからには本当はもっとすごいやつだと思ったが。

 ただのサボりじゃねえか!


「だ、だってぇ。かつどーって言われても具体的に何をすればいいのかわかんないんだもん」


 サーラは人差し指と人差し指を胸の前でくっ付けて拗ねる。

 か、かわいいが。


「毎日近くの村に挨拶に行くとか!ゴミ拾いをするとか小さいことでもいいから普段からしろよ」


「コータのくせに何格好いいこと言ってんのヨ」


「うるせぇ。たまにはかっこつけさせろ」


 そう言っている間に食事会場についた。

 ここにくるまでにこの国の状況やサーラの事についての情報収集ができた。

 薄々思っていたのだがそこまで話ができるほどの距離と時間があるだなんて。

 もはや家というより城だな。


「お、この肉案外うめえ」


「でしょー。私もこのお肉好きなんだー。毎日食べちゃうの」


「いくら好きだからといって朝から肉って・・・太るぞ。」


「女の子にかける言葉じゃないよコータ」


「失礼極まりないのヨ」


 そんなこんなで楽しい会話や使用人二人の人格なんかも少しわかった。

 するとサーラが真剣な表情で。


「コータ。あの時私を助けてくれてありがとう」


「ん。いいよいいよ、そんなの当然のことをしただけだ」


 格好つけるつもりはなかった。

 本心からそう思ってる。


「それでね。何かコータにお礼をしたいの何でも言って」


「え!?なんでも!!えぇへ。困っちゃうなぁ~」


 一瞬エロいことをお願いしようという意見が脳内会議でよぎったが、そんなことよりオレの願いはもう決まっている。


「じゃあ、サーラの選挙の手伝いをさせてくれ」


「・・・え、お礼がしたいって言ったんだけど」


「あぁ、これがサーラがオレに対するお礼だ。異議ある?」


「ないけど。でも――――」


「ならよろしい!」


「それにここらへんについて何も知らないオレをほったらかしの方がオレにとっては死刑宣告みたいなもんだしな」


 サーラは何か言おうとしたがそんなこと関係ない。

 なにを言われようと俺はこれだけは曲げねえからな。


 じ〇ちゃんの名にかけて!というどこかの人気アニメのセリフを言いたかったがやめておこう。


「じゃ、じゃあよろしくね。コータ」


「おうよ任せとけ。オレがお前を王様にしてやる!」


「――――ありがとう。期待するね」


 サーラの満面の笑みが。ちょっと頬を赤らめて笑ったその顔が可愛すぎて少し照れた。

 というかデレデレだ。


「コータどうしたの顔が赤いよ」


「な、なな、なんでもねえよ。さあ!今日から頑張るぞー!」


 こうして康太はバルニアス候補団の一員となった。


 さあ、オレが大活躍してサーラを王にしてやる!そう決意した。


 そして康太は――――――――。


「で!なんでオレはこんなことをやってるんだーーーー!!」


 午前は洗濯や食器洗い、午後は昼食の準備と家の掃除。

 これでもう3日目だ。


「オレは王になるために手伝いをしたいと言ったのになんで雑用係になってるの!?」


「コータさんこれも立派なお手伝いの一つですよ」


「まぁ急ぐことはないか。急がば回れ。フッそういうことかこういうことっすね先生!やっとわかりました!!」


「フフッコータさんってとても面白いかたなんですね」


 イリスが口に手を当てて笑いをこらえきれず苦笑する。

 この3日間。

 ほとんどの仕事をイリスと一緒にしているからか人見知り症はなくなり、少しは心を開いてくれたように思う。


「そういう素のイリスのほうが可愛いと思うんだけどなぁ」


「ひぇ!か、可愛いことなんてありませんよ」


 イリスは赤い顔をオレに見られまいと背ける。

 可愛い。

 は!あ、危ねぇもう少しでオレのテリトリーに不法侵入されるところだった。


「コータ様。夕食ですので食べたら今日はもう私たちでやるので上がてもらっていいですよ」


「あぁ、そう。ありがとな」


 とシャルティア。

 彼女は面倒見がいい、できる人だな!と、上から目線な事を考えていた。


 そして夕食も済んだ時。


「さ、人に聞いてばっかりは悪いから今から情報収集という名の常識勉強するか」


 オレがいる場所はこのサーラ邸の図書室にいる。どこを見ても本だらけ。


「オレんちの近くにある本屋より本多いぞ。まああの本屋は3冊しか置いてなかったんだが」


 オレは図書館の本を手に取り今日は情報収集に徹する事にした。


 ここ、アルグ王国の他に3つの国がある。

 ヴァミア帝国。キルスタン教国。ヤバナ商国。

 そしてアルグ王国。


 この世界の歴史について。

 大昔に創造神が舞い降り世界を構築し人類を誕生させた。そして神の下人々は平和に暮らしていた。

 だがその後突如魔獣が出現し人々を襲ったという。そうした問題に問題が重なりに重なって、やがて人類の中で二つの対立する派閥ができた。


 サンライト。ムーンライト。


 サンライトとムーンライトでは政治から何から何まで180度違うそうだ。

 要するに、サンライトは基本温厚だが、ムーンライトでは常に殺しに殺しなどの狂気の塊というような感じだ。


 それにサンライトとムーンライトでは圧倒的にサンライトの方が人口が大きい。が、ムーンライトは所属人口は少ないが一人一人が凶悪で強力な能力を保持しているらしい。ムーンライトは世界各地にアジトがあり息をひそめているそうだ。

 だが、能力やアジト、構成員の容姿や正確な人数さえも分からず現在に至っても謎のままのようだ。


 などなど、それから1時間ほどこの世界について勉強した康太だった。


「さて、そろそろ寝たいところだけど。オレにとって一番考えなければいけないことがあるな」


 そう、この前サーラを庇った時の事だ。

 なぜ起きてもないことががその直後に起こる。


 結果サーラは救えたから感謝はしている。

 だが、疑問に思うのが当然だろう。


 まるで未来を見ているような――――――――。


「未来を見ている・・・!!」


 そう何もない凡人のオレにある、たった一つの力。


 ――――未来予知――――


「オレげえじゃん!魔法よりすごいんじゃね!?まあ、なんかパッとしないけど」


【固有スキル:アヴニールアイ】


 …………んっ?脳内になんか浮かび上がってきたぞ?


 え、なにまってもしかして、スキルとかの概念あるの!?めっちゃ、ファンタジーっぽいし!!!じゃあ、ステータスとかってあるのかなぁ!!


 少し興奮気味になっているところに・・・。


「コータ、少しいい?」


「しゃ、しゃーらしゃん!?ど、どどどどうした!?もしかして眠れないのかい?じゃあ僕が一緒に寝てあげようかい?グヘヘ」


 当然、後半部分は冗談だ。

 それよりもオレは夜に女の子がオレの部屋に来たことが何よりも驚いた。


「コ、コータ。私のために手伝うって言ってくれてありがと」

「お、おれがしたいからい、言っただけだ」


 ま、まま、まさかこれは――――――――。


「そ、それでねコータ。とぉーっても言いにくいことなんだけど」


「な、なんだ」


 サーラはオレを上目遣いで見てくる。

 これはまさかのあれでは――――――――


「コータには魔法や武術を身につけてほしいの」

「・・・・・・あ、うん」


 そんなはずねえよな。期待してたオレバカすぎるだろ!

 ま、俺も手伝う身なら自分のみぐらい自分で守れるようにしないと人を守るとか言ってらんないからな。


「だから明日からシャルティアに稽古してもらうの」


「わかった。了解だぜ!!サーラたんのためなら地平線のかなたでも、宇宙の果てでも行くぜ!!」


「またすぐそうやって調子に乗るんだから。フフッ頑張ってね」


 あぁ、その一言だけで一生ニヤついて生きていける気がする。


 用が済んだサーラは部屋を出て行った。

 魔法は大半諦めていたがラスタという魔法も境地の中もくぐり抜ける相棒になるかもしれない。

 そう思うとまだ使ってもないが愛着が湧いてきた。


 それに、武術の方も気になる。

 家や部活などでもなんの考えもなしに筋トレや精神統一(妄想)ばっかりしていたことが役に立つかもしれない。


 魔法と武術の特訓にはとても興味はあるが・・・・


「今日はこのくらいにしとこーか。さ、オレももう寝るか」


 お得意の妄想ばかりしていても仕方ない。早く寝よう。


 ベッドに就寝につく。


 ※※※※※※※※※※※※

【固有スキル:アヴニールアイを発動します】






 ※※※※※※※※※※※※


「う、うぁああああああああああ!!!!」


 ベッドに横たわっていた俺は恐怖と共に目覚めた。



 ――――――なんで、あいつが……


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