第3話 コータは決意しました
────なんで。
「…な、何なんだ今の」
そう、それは俺が就寝のついて、眠った直後だった。
※※※※※※※※※※※
青白い世界。《アヴニールアイ》だ。
オレに未来を見せる目。
意識だけが浮いている世界。
今回はオレになにを見せるんだ。
ここは、屋敷の前か。
───屋敷からオレが出てきた。
オレが異世界転移したときのジャージの服装だ。なぜだ、使用人用の服装で統一されているはずだが。
そして、オレは屋敷を出たすぐ後真っ直ぐ歩く。屋敷の前は綺麗な花の庭がある。それを、オレは庭の真ん中の道を通る。庭を両脇に進む造りになっている。
オレは庭を通り抜け広々としたスペースに出た。
バルニアス邸は大きな屋敷、美しい花の庭、広々としたスペース。恐らくここは、客人の向かい入れるスペースだろう。
そして、バルニアス邸とを結ぶ大きな門。大型トラック2台分くらいの幅だ。門の外はすぐ近くのアルゴ村へと続く森に囲まれた道がある。
森には魔獣の群れがありシャルティアには絶対にはいるな。と言われている。
オレがここまでくることは余りない。
すると……
───スパァンッ
光の筋のようなものがオレを通過した。
その直後俺は倒れた。
よく見ると、オレの横っ腹から大量の血と内臓が零れ出ている。
倒れたオレは痙攣し口をパクパクさせ、何かを訴えかける。
が。横っ腹を深くエグられたオレに言葉を発することはできない。
……斬られた。
光のごとく。閃光のように。
眼は白眼を向き。死にたいのに死ねないオレは未だ止まることを知らない血と内臓に手を当てながらもがき、苦しむことしかできない。
倒れたオレの前に謎の人間がいた。
黒いローブを纏い。フードも被っていて顔が見えない。
露出しているのは膝よりしたの足と手首から先の手だけだった。
そうか、コイツが俺を斬ったのか。
謎の暗殺者といったところだろうか。
これ以上相手に関しての情報が出てこなかった。
誰なんだ、コイツは。
だが次の瞬間目を疑うような物を目にする。
オレが絶命した直後だった。
息が絶えオレの死を確認した黒いローブの人間は撤収するため素早く振り返ったそのときだった。
オレは見た。見てしまった。
───ローブの下から使用人の服が見えたことを…。
※※※※※※※※※※※※
「うぷッ。うぇぇえええ!」
夕飯に食べたものを全て吐き出す。
殺されたことに嘔吐したのではない。
「な、なんで……。」
信じられなかった。
なんで。なんで。なんでなんで。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。───なんで。
康太の思考能力は混乱し頭の中にあるのはその疑問しかなかった。
ヤバい。胸が熱い、苦しい。
呼吸が荒い。
「落ち着けオレ。今こそ母さんがやってた呼吸法だ。ヒィヒィ、フゥー……」
落ち着いた。こんな呼吸法でないと気が紛らわせられない。
整理しよう。
《アヴニール・アイ》が見せる未来はこの先絶対に起こる事だ。
そして、オレはバルニアス邸の領内で使用人に殺された。
なぜだ?
仕事を失敗したから?それは流石にないだろう。
オレがみた未来より前に何かがあって逃げ出したから?
「今そんなこと考えてても拉致があかねえ。重要なのは対策だ。」
まず、殺した相手はバルニアス邸の使用人で間違いないだろう。では、殺したのはシャルティアかイリスのどちらかということだ。
「クソッ!なんでなんだよ!」
オレはベッドに殴りつけ八つ当たりする。
そんなことは今しても仕方ない。
どっちが……オレを殺したんだ。
「まず、イリスだが……考えにくいな」
彼女の性格上の問題もあるが。
今までの3日間屋敷での仕事では指示はシャルティアが出し、仕事ではイリスと一緒にすることが大半だった。
サーラとは食事の時や出会った時に少し話しはするが現段階でオレと一番長く接している女子ナンバーワンはイリスなのだ。だから、イリスの人柄については結構知っているつもりだ。
そうした理由で、イリスはないと考えられる。
「てことは、消去法でいくと……シャルティア。」
少し考えにくいと思った。だが、彼女を犯人として考えれば頷ける要素がいくつかある。
まず、これまで片手で足りる程しか接していないこと。それに、自分の主を助けてもらった恩人だが、素性のわからない人間に心を開けるかというとそれは別問題だ。
そして、彼女自身感情を表に出さないクールな人だ。だがその反面、冷徹冷酷な面もあると考える。
他にも不安要素は出てきたが代表的な要素はこの3つだ。
「じゃあ次にどうするか、だ」
襲撃のあった位置と攻撃を受けた場所は覚えている。
「都合よく明日から特訓がある。そこで強くなるか。」
だが、オレの頭には疑問が浮かぶ。
──アレほどの動きができる者に数日頑張ったくらいではたして勝てるのか。
いや、無理だ。精々、初撃を防ぐのがやっとだろう。
「タイマンでは勝てないな。じゃあ、次に説得か……。」
最悪初撃は防ぐことができる。防いだ後に説得し和解する作戦。
────イヤ、ダメだ。オレは頭を振って否定した。
奇襲攻撃を防がれその上対象からやめてくれと言われて、誰が はい、そうですか。と引き下がる奴がいるのか。
では戦いになると死んだも同然ということになる。
「クソッどうすんだよ。殆ど詰んでんじゃねえかよ。考えろ!考えろオレ!」
そして、ふと頭に浮かんだ事があった。
「────に、逃げる……。」
だってそうだろう。戦っても勝てない。じゃあ逃げるしかないだろ。
だが、その考えを否定するオレがいた。
逃げるのは論外。それに───。
「オレにとっちゃ2回目の人生だ。死んだところで────。」
諦めかけた発言をしようとしたオレの喉を止めたもの。
────ペンダントだ。
ペンダントといっても名ばかりで白のビー玉をぶら下げているだけのようなものだった。
オレはそのビー玉を見て。
「決めたよ。俺は生きる。最後の最後まで生きてやる。死ぬかどうかは俺が決める!」
すると胸が熱くなってきた。悲しみではない。勇気だ。声にならない感情が体中を駆け巡る。そしてオレは苦笑し───。
「やってやるぜ運命様よぉ。」
家族みんなの顔が見える。
オレはペンダントを首にかける。
そして、首下にある白いビー玉を握り締め。
『────そんな未来。オレがブチ壊してやる!』
オレはいるかもしれない運命の神様に宣戦布告した。
今、オレは決意した。
みんなが幸せで笑顔が絶えない優しい未来にすると。
決してそれがどれだけ険しく、茨の道だとしても。
そしてオレは考える。
戦いになれば殆ど終わったと考える。
では、戦いにならなければいい。
どうやって?
簡単な事だった。
────信用されればいい。
シャルティアと仲良くし、信頼を勝ち取ればいい。
友達を無意味に殺す友達なんていないのだから。
そしてオレはコレからの予定を纏めているメモを見た。
「オレの服装はジャージだった。だから屋敷内の仕事じゃない。ということは────。」
使用人の服を着ていかない行事。
それは、食糧の買い出しを踏まえたアルゴ村の村人との交流だった。
屋敷で目覚め働き始めてから今日で3日目の夜、交流は6日目の朝。
「てことは4日目と5日目の2日間が勝負だ」
オレの目は闘志に燃える。
今のオレなら何でもできる気がする。
オレは思う。
これから、このようなことがまた起きるかもしれない。
だが、オレは諦めない。
「みんなでハッピーエンドを迎えるために!」
オレはソッと眼を閉じ眠った。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※
4日目の朝
「───やべぇっ。緊張して眠れなかった」
───梶馬康太の戦いの幕開け───
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