勇敢

「今度こそ、言ってやる」

 そう意気込んで相手に向かっていく友人を、僕は止めることができなかった。

 ひと言――「止めときなよ」と、言っていれば何かが変わったのかもしれない。しかし、友人の弱々しくも勇敢な後ろ姿を見て、声をかけることができなかった。

 僕の前に再び戻ってきた友人の顔は、赤く染まっていた。ボロボロになった彼を見て、思わず涙が溢れた。

 友人は地面を見つめたまま、何も言わない。向かっていく前の友人とはまるで別人。そうとう辛かったのだろう。

 僕にしてあげられるのは、友人に文句を言ってやることだけだった。

「ねえ……もう白鳥さんに告白するのは最後やめにしよう。これで10回目だよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

親指小説 文目みち @jumonji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ