第11話
日曜の昼間。 布団に横たわりながらカーテン越しに空を見る。
仕事の休み。 こうやって一人でハーブを燻らすのがここ最近の俺の癒しになった。
染谷も今日は仕事休み…のはずだが、不思議なことに出勤しているらしい。
当然仕事ではないから給料は出ない。
狭い個室の中で客が来て何かわからないことがあった時にだけ出ていくそうだ。
正社員ですらないのにまったくご苦労な話だな。
そう毒づく俺に「もうこういうことは前の仕事で慣れてるからな」となんでもないように答えていた顔が思い浮かぶ。
仕事ではないはずなのに携帯をロッカーに置き、ただただ椅子に座って客の質問を自動販売機のように待つ。
そんな親友の姿を想像しながらアンニュイになる気持ちをハーブの煙で心から押しだす。
染谷の病気は変わらず。 俺の生活も相変わらず。
毎日毎日仕事をこなし、理不尽な物言いに曖昧に笑い、頭を下げてやり過ごし、そして家に帰ってハーブをやってそのまま眠る。
俺も染谷も同じだ。
生きているのか死んでいるのかもわからない。
現状を変えようとも思っても何をしたらいいのかわからない。
いや何をしようと何も変わらないのだから、そう思うことこそ不毛以外の何者でもない。
俺や染谷もある意味社会不適合者だろう。
周りの人間が当たり前に思うことが思えないのだから。
仕事にのめりこめばそれを忘れることが出来るのだろうか?
いや、結局は社畜という名の奴隷になることなのだから問題外だな。
ハーブを休憩し、ヘッドホンを取りだして音楽をかける。
音楽だけが最大の癒しだ。
小説もマンガも映画も好きだが、もっとも好きなのは音楽だ。
そしてその音楽を最大限楽しませてくれるのがハーブだ。
だが時折、何かが蠢く。 心の中でそれは確実に在るのだが、それが何なのかわからない。
イラつく気持ちを押し殺すように休憩しようとしたハーブをまた一口吸った。
それは大分落ち着いたが、それでもやはり消えずに存在していて妙に焦らせる。
「……ハーブ買いに行くか」
やることも無い。 ダラダラとハーブをしているのもいいが、それだけではやはり退屈だ。
車のキーを掴み、玄関のところで一口吸ってから外に出た。
ギラギラとまぶしい太陽がとても素晴らしいものに思えるくらい快晴だった。
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