第7話
「やってみるか? ハーブ」
妙な緊張感で唇を干からびせながら慎重に言葉を紡ぐと、染谷は少し驚いたようだった。
すでに俺がハーブをしていることは染谷に言っていた。
『酔い』の影響もあっただろう。
でなければ言えるはずが無い。
たとえ『ハーブ』がどれほど素晴らしかろうと、またそれゆえに甘い毒薬だとしても堕ちていくのは俺自身だ。
そう、決めた俺自身なのだ。
たとえこの先にどうなろうが俺が俺自身が決めたことだ。 俺だけの決断だ。
だがこの場合はどうなのだろう?
たとえ悪心が無かろうと、親友を堕落させることは果たして許されることなのだろうか?
逡巡は唐突に途切れた。
俺の提案を染谷は笑顔のような泣いてるかのような顔でポツリと一言、
「ああ、やってみようかな」
それは誰にとっての救いだろうか?
だがその言葉と表情がかすかに残っていた罪悪感を一蹴し、染谷の笑う声と共に静かに霧散していった。
「お~、これは凄い…凄いな~!」
俺が拵えた中味を詰め替えた『タバコ』を口にした染谷の反応はまさに少し前までとは雲泥の差だった。
まるで学生の時のように『酔い』はしゃいで久しぶりに見た心からの笑顔だった。
その模様を見ていながら俺はいつの間にかしみじみとした笑みを浮かべていることに気づく。
それは安堵だろうかそれとも後ろめたさ故だろうか?
それを一度頭から追い出して大笑いする染谷を俺は見つめていたのだった。
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