悪魔との契約
食えないカレー
悪魔との契約
コンクリートの壁を切れかけた蛍光灯がちかちかと照らしている。そんな部屋の真ん中にボロボロのコートを着た男がパイプ椅子に座っていた。
「ディアボリ ディアボリ ウーケ ヴェーニ イジトゥル インヌ」
男が奇妙な言葉を唱え始めると、男の目の前に火の玉が現れる。その火の玉は大きくなり、人を一人飲み込めるほどの火の柱になる。
「魔方陣も何にも描かないで俺を呼び出すなんて、変わっるねぇ」
火の柱の中から男の声がする。
「お前が悪魔か?」
コートの男が低い掠れた声で柱の中に声をかける。
「それは、呼んだあんたがいちばんわかってるだろ?」
火の柱の中から手が飛び出し火を掴みカーテンのように開ける。
「いきなりで悪いが、本題に入らせてもううぞ」
柱の中ではスーツを着た
「願いを三つ叶えてやるから、魂をよこしな」
男が椅子に座り直す。
「じゃあまず一つ」
男は覚悟決めるように息を吸う。
「これから言う願いを私が思う形とは違う形で叶えた場合、君との契約を無効にすること」
「へえ、」
悪魔が目を細める。
「よっぽど叶えたい願いがあるんだな」
悪魔がいつの間にか置いてあった、安楽椅子に座る。
「二つ目、私がもういい、と心から思ってこの体で言うまで願いを叶え続けること」
悪魔が今度は眉間にしわを寄せ不機嫌そうにする。
「前、同じ事を言ったやつがいたんだ」
「・・・そのまま天寿を全うされてしまったのか?」
「いや条件の言葉を言わせたさ」
悪魔の機嫌が少しだけ良くなるがすぐに元に戻り舌打ちをする。
「だが、偉大な神様がそいつの魂を天国送りにしたんだよ」
悪魔が頬杖をつきため息を吐く。
「おまえにはそんなことをさせんからな」
悪魔は男のほうをじろりと睨む。
「もう三つ目をいわせてもらっていいか?」
「ああ、済まんな。俺だけ喋ってちゃお前の魂回収できないもんな」
悪魔が口の端をあげ笑う。
「さあ、三つ目を言うんだ」
コートの男がポケットに手を突っ込み髪の束を取り出し悪魔に向かって出す。
「私の三つ目の願いは、この世界をこの紙に書かれたことを達成された世界にすることだ」
悪魔がそれを受け取り読み始めると驚愕の表情で男を見る。
「あんた、正気か?」
悪魔が震えた声で問い、男が静かにうなずくと悪魔は椅子を勢い良く立ち上がり叫ぶように喋りだす。
「ここまで前置きしといて願いが世界の平和?ふざけてやがる!!」
悪魔の震える手に握られている紙の束の一番上の紙には貧困の撲滅、差別の解消、戦争の解決などと書かれている。
「別に、おかしくないだろう」
「いや、おかしい。なんでここまでして願うのが人の平和なんだ?気が狂ってやがる!!」
悪魔が男を理解できないものを見るような目で見る。
「悪魔にそこまで言われるとは思わなかったよ」
男の言葉を無視して、悪魔は叫ぶように続ける。
「俺が今まで担当してきたのは自分の事とか、いって家族とか恋人の事しか考えてないまともなやつだったんだ。お前のみたいな自分のことを考えないやつなんて初めてだ!!それになんで魔法じ・・・」
「もういいか?」
男が苛立ったように言う。
「お前の仕事は俺の三つの願いをかなえることだ。だから黙って俺の願いを叶えろ。いいな?」
男が悪魔をにらむ
「・・・わかったよ」
悪魔がしぶしぶとそして自分を落ち着けるように頷く。
「だが、二つ目の願いがあるから条件の言葉を言ったらそこで終わりだがな」
悪魔が男を嘲るように笑いながら言う。だがその顔は少し引きつっているようにも見える。
「ああ、わかってる、わかってるさ」
男は自分に言い聞かせるように言い。椅子から立ち上がる。
「おまえ、何をする気だ?」
悪魔が男の顔を見ながら問う。だが男はそれを無視し喋り始める。
「私は二つ目の願いに『心から思ってこの体で言うまで』を条件として着けた」
そして男は悪魔の周りを歩き出す。
「だが生きていたら悪魔に本当に心の底から条件の言葉を言わされてしまうかも知れない」
男は何周かした後に悪魔の前に立ち悪魔のほうに立つ。
「私が生きている間だけ平和な世界なんて意味はない」
男がポケットに両手を入れる。
「だから・・・こうすることにした」
男がポケットから右手をナイフとともに出し自ら喉にあてる。
「やめろ!」
悪魔が凄まじい速さで男の右手を掴み下ろさせる。
「は、はは。これでどうだ」
悪魔が引きつりながらも勝ち誇ったように笑う。
「君たちって痛みを感じるのかい?」
男の突然の問いに悪魔は訳がわからないと言ったような顔をする。
「まあ、いいか。ごめんなこんな事に巻き込んで」
そう言い男はまだポケットに入れられた手でスイッチを・・・部屋に仕掛けた爆薬のスイッチを押した。
そして、部屋は爆音と炎に包まれる。
悪魔との契約 食えないカレー @kuekare
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