龍を描く舞姫と後宮公子

あらま星樹

登場人物・用語紹介

◎登場人物

そう玉蝶ぎょくちょう(12)…銀漢ぎんかん帝国に歌舞音曲を捧げる宮妓きゅうぎ見習いである雛妓すうぎ。六歳離れた兄・玉鸞ぎょくらんと同じ青眼を持つ黒髪の美少女。兄のに服していたため、教坊きょうぼうでの舞や音楽の稽古は同期と比べて三年遅れている。それゆえ同世代の雛妓と比べて、舞台出演歴が少ない。


こう珪雀けいじゃく(17)…第三公主こうしゅ紫晶ししょう殿下に仕える端正な面差しの青年。父親が紫晶の母と双子。実の姉弟きょうだいのように育った従姉・紫晶とともに、亡き友人・玉鸞の死の真相を追っていた。後宮公子こうきゅうこうしとも侍衛官じえいかんとも呼ばれる、妃嬪の外戚から輩出される名誉職にして閑職に就いている。


紫晶ししょう(17)…銀漢帝国第九代皇帝・極光帝きょっこうていを父に持つ第三公主。敬称は殿下。後宮公子こと珪雀の従姉。異国に降嫁することが決まり、心残りである玉鸞の事故の調査を、家令かれい白氏はくしに命じたところ、白氏は何者かに襲われた。


翠輝すいき(27)…吉祥をもたらす白銀髪と翡翠色の眸を持つ美貌の宦官。かつて天覧てんらん氷舞ひょうぶで舞手を務め、六年前に玉蝶の兄・玉鸞と紅榴こうりゅうを指導した。玉鸞の死体が盗まれた咎で、墓守を務めていた養父が後宮を追放されたのが判明。その後の翠輝の不審な行動を紫晶はいぶかしむが……。


紅榴こうりゅう(19)…吉祥を現す赤髪と黄金の眸を持つ華やかな宦官。六年前に好敵手・玉鸞と天覧氷舞の出演を争い、負けた過去がある。今回の天覧氷舞では、弟子の桃簾を出場させるべく指導役を務めるが、玉蝶の面倒を見る羽目になってしまい……。


桃簾とうれん(12)…淡い金髪と桃色の眸を持つ可憐な宦官。歌唱力に優れた紅榴に弟子入りが認められた唯一の存在であり、その外見と師匠に劣らない歌唱力は、多くの人間に期待されている。玉蝶と天覧氷舞の舞手を争うことになる。


玉鸞ぎょくらん(13)…玉蝶の兄、故人。吉祥をもたらす白銀髪と青眼の美童であり、最期さいごの出演となった天覧氷舞は、観客と同胞である宦官の間では伝説の存在として語られている。


◎用語紹介

教坊きょうぼう…宮妓や雛妓の訓練所と宿舎一帯を示す。百官が集まる朝廷の端に存在している。


宜春院ぎしゅんいん楽人がくじんと呼ばれる音楽や芸術に秀でた宦官たちの養成所と宿舎一帯を示す。成人した未婚の皇子たちが住む東宮とうぐうの南に存在している。


氷舞…鞋底くつぞこ滑氷刃かつひょうじんをつけた滑氷鞋かつひょうあいと呼ばれるくつで、氷上を舞う。楽器演奏中に、氷上にて舞を披露するが、舞手の旋回や跳躍の振り付けだけではなく、滑氷刃が銀盤に刻む軌跡も注目される。


滑氷…滑氷鞋で氷上を、歩く・走る・止まる・立つといった基本的な動きを現す。旋回や跳躍、さらに音楽が加わると氷舞となる。用途によって鞋底に取り付けられた刃の形が異なる。

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