第5話

 チャイムが鳴る。今の時間なら1時間目が終わった頃だろう。


 俺は今、屋上にいる。


 何故かというとサボった。あの女に会いたくなかったから。


「ふう…もう終わりか…」


 教室に戻ろうとベンチを立つ。


 ドアの方に振り返った時、そこに天風がいた。


「ここにいたんだ…」


「は?何でここにおまえが?」


 普通の人はここにいるべきではないのに何故ここに?


「1時間目からいないんだもん。校内隈無く探したんだよ?」


「授業はどうした?」


 天風は首を傾げた。


「抜けてきた」


 さらっとあり得ない言葉が出てきた。


 俺は愕然とした。


「はあ!?サボった!?」


 いきなりの大声に天風はビクッとした。


「あっと…すまん…」




 放課後




「はあ…」


 今日はいったい何だったんだ…


 いきなり転校生が来るわ、その転校生が前に助けた人だわ、俺こと探しに来るわ、何なんだいったい…


 うつむきながら早足で家に帰る。




「ねえねえお嬢ちゃんあっちで遊ばない?」


「いや…やめて…」


「抵抗してねーでさっさと来い!!」




「ナンパか…?」


 そっちの方へ向くとナンパされていたのは天風だった。


「はあ…」


 ため息をつきながらそっちに近づく。


 あまり目立ちたくないがこのまま放置しとくものアレなので、


「おい」


 大柄な男に声をかける。


「ああ?なんだ?」


「そいつ俺の彼女なんだよね。返してくれねーか?」


 内心ヒヤヒヤしていたが天風の腕をつかんで男から逃げる。


「おい!ちょいと待てや!」


 ナンパ男から逃げ切り、角を曲がってつかんでいた天風の腕を放す。


「…ありがと」


 天風からボソッとお礼を言われた。


「…いや、とんでもない」


 これ以上絡まれたくないので天風を送って家に帰る。


「ただいま…」


 二階に上がり自室に入る。


 宿題をやるがなかなか進まずあきらめて下に降りる。


「奏、ご飯よ」


 母さんが呼びにきた。


 夕食を食べた後、風呂に入る。


 頭に浮かんだのは天風のこと。


 転校生としてこの高校にきた訳だが、授業について行けるのか?


 いきなり1時間目からサボるなんて…


 のぼせそうなのでさっさと上がる。


 もう遅いので寝ることにする。

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