彼女と会う時はいつも雨.11
†
次の日も、朝からずっとしとしとと雨が降っていた。通学途中の道で、Kと出会う。
「よお、玲さんの手がかりは、見つかったか?」
来た。来ると思っていた。来てほしくないのに、来てしまった。
「玲さんのことは、諦めることにしたよ。協力してくれてありがとう、K」
思ったよりも、すらすらと言えた。表情もごまかしがきいた。素っ気無く、本当に興味をなくしたように言うことができただろう。これで、一安心。これで、いい。
「……分かった。そういうことだな、理解したぞ。俺は、もうこれ以上何も言わない」
ものの数秒で看破されてしまった。予想以上に、Kは優秀だった。まずい。このままでは二度と会えなくなる。Kから逃げなければ、と思って少年が足を速めようとしたタイミングで、Kが少年を止めた。
「何を焦るんだ?俺は何もこの件で言うつもりはないし、お前を助けてやるつもりも、助けてやれる自信も全くない」
少年は唖然とした。一体、どこまでKは知っているんだろう。立ち止まった少年の足を、Kが背中から無理やり推し進めながら、一言ずつ区切るように言っていく。普段のKらしくない動きだ。そういえば、傘も差していない。朝からずぶ濡れである。少年の傘の雨だれも当たって、余計に冷たいだろう。だが、それでもKは止まらない。
「ただし、そう、ただしだ」
そこまで言ってから、Kは立ち止まって、一呼吸置いて、しっかり深呼吸をした。
「朝の時間を少し稼いでやるくらいのことは喜んでやろう。思う存分、思いの丈をぶつけてやれ」
そして、Kは走り出した。返事を聞くつもりはないようだ。追いかけようとしたが、やめておいた。多分Kは。
「ありがとう、K」
最高の武器と励ましをもらった。迷う必要はない。ひたすらにまっすぐ攻める。玲にだって、きっと届くはずだ。少年も走り出す。目指すは、図書室。一分一秒でも早くたどり着きたかった。しっかり謝って、仲直りして、Kを慰めて、元通りの日常に、戻りたかった。
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