彼女と会う時はいつも雨.4

血の気が引いた。震えが止まらない。ここまで「らしい」だなんて、思っていなかった。ここまで、徹底的に痕跡を絶とうとするだなんて、予想できなかった。

図書館に戻って、司書のところまでフラフラと歩く。もしかしたら、人の記憶には残っているのではないか。

「こんにちは。どうしたの?ずぶ濡れだし、顔も真っ青じゃないの。親御さん呼んだ方がいいかしら?」

痩せた、見慣れた顔の司書が少年に話しかけてくるが、少年の目のピントは合っていない。

「僕は、いつも玲さんとここに来てますよね?」

「何言ってるの?」

心配そうに、少年の肩を支えながら痩せた司書は少年の言葉を促す。

「答えてください。僕はいつも、セーラー服を着た高校生の人と、ここに来てますよね!?」

鬼気迫る勢いの少年に司書は少したじろいだ。

「そんなの当り前じゃない」

少年の顔がふっと安心したものに変わったが。

予想外の――しかしこういう時にお決まりの――展開に、笑いがこみあげてくる。

「ありがとうございました。今日はちょっと出直します」

何とかそれだけ言って、少年は駆け出した。司書が引き留めるが、そのまま自分の家まで走っていく。それしか、今はできることが見つけられなかった。

少年が家に着いた頃、雨は既に止んでいた。しかし、少年はそんなことにも気が付かないほどに、玲との別れに打ちひしがれていた。



次の日。少年は頼りになる親友に電話をかけた。小学生の時からの付き合いで、彼の方が成績が良く、頭もキレる。こういう時こそ、頼りになる人物だ。親友Kは、「すぐにお前の家に行くから待ってろ」とだけ告げて、電話を切った。イニシャルがK.K.で名前まで「ケイ」だから、ニックネームも「K」。ナイフみたいにとがっていて、騎士のようにお堅い奴。ぶっきらぼうで、話していると少し腹が立つが、良い奴だと、少年は思う。

「で、何があったのか、詳しく話してくれ。俺はその、玲なんて人は知らないんだ」

何度も玲のことは話しているはずなのに、Kも司書と同様の反応である。

「Kでもダメなのか……」

独り言のつもりで言ったのだが、Kは眉を上げた。プライドが傷ついたようだ。

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