彼女と会う時はいつも雨.3
†
「少年。人間には、言っていいことと、悪いことがあるんだ。今のは、とびっきりによくない。最悪だ」
突然の出会いから始まり、育まれてきた二人の友情は、やはり突然に弾け、終わる。玲のいつもの笑顔は消え失せ、無表情のまま、玲は少年を諭す。
「私と少年の仲であるから、多少のことは我慢するつもりであったし、今もそのつもりである。しかし、『私と会う時はいつも雨』だけは、言ってはいけないんだ。それが事実だとしても、それが少年にとって言わなければならないものだとしても、決して。そう、決して言ってはいけなかったんだ。だから、少年はそれに対する報いを受けなければならない。魔法使いとトモダチになるということは、そういうことだ」
言うだけ言ってしまった玲は傘を差さずに、少年に背を向けて、歩き去ってしまう。
「さようなら、少年。少年とトモダチでいられた時間は、私にとってとても楽しい時間であったよ」
「待ってください!」
誤解なんです。信じてください。僕は、玲さんとトモダチでいたいです。好きです。トモダチでなく、コイビトになってください。かける言葉は思いついても、心で重く、鋭く強く生まれようとも、喉まで来るとつかえてしまう。なんと喉の小さいことか、なんと自分の無力で愚かなことか。――こんなにも残酷な玲の、なんと神様らしいことか。
言葉の重さが少年の足にのしかかり、しばりつけ、動けない。思うように足が動かないまま、玲との距離は離れていく。急げ、急げ、走るんだ。……足がもつれ、姿勢を崩し、頭から地面に飛び込んだ。
「玲さん!?」
視界が玲を捉えきれなくなった途端に、玲は姿を消した。そこの曲がり角にまだいるに違いない。
「玲さん!!」
果たして、玲はどこにもいなかった。雨脚が次第に強くなってきて、少年はびしょ濡れになって図書館の近くを走り回ったが、玲の姿は見つからなかった。
「携帯電話!」
電話を鳴らせば手掛かりくらいにはなるかもしれない。もしかしたら、出てくれて、謝ればゆるしてくれるかもしれない。震える手でアドレス帳を開き、焦る手で玲の項目を探して。
「ない?なんで?どうして?そんな。そんな……」
そんな馬鹿な。今朝だって使ったのだ。それなのに、履歴にも今までのメールの送受信記録にも、玲がいない。
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