彼女と会う時はいつも雨.5

「兎に角だ、きちんと情報を整理するべきだろう。話はそれからだ」

自分に言い聞かせるように、Kは言った。思ったより、プライドが傷ついている自分に自分でショックを受けたのだろう。相変わらずのKの様子に安心しながら、少年は言った。

「玲さんは綺麗な人だ」

Kは大真面目に頷いて言う。

「それはもう聞いた。別れる瞬間のお前の言葉と、その後の不可思議な現象もだ。そうではなく、普段の彼女というものを言うべきだ」

少年は、腕を組んで考えた。

「寂しがりやで、気まぐれで、自分と自分を信じてくれる人間だけが好き、だと思う」

簡単に言うと、天使か悪魔か神様が、この場に直接現れたって感じ。とさらに少年は続ける。

「お前が神というものにどういう思いを抱いているか見える言葉が混じっていたが、まぁいいとしよう。そのような人物が、たった一言で好きな人間を捨て去ってしまうだろうか」

俺なら違う。Kは断言した。少年が目を丸くしたが、Kは続けて言った。

「俺なら相手をそこで試そうとする。今まで育まれた友情が真実であったかのテストだ。たとえば、そうだな……」

そこでKは言葉を区切って、天を仰ぐ。なにやらぶつぶつ唱えているので少年が不安になって「K?」と言葉をかけたタイミングで、再びKは少年の方を向いて言った。

「何か、彼女からプレゼントを貰ったことがないか?友情の証だとか、絆の証明だとか、そう言った名前で彼女が呼んだプレゼントだ」

「……………………あ」

小さな布張りの木箱。「絶対に開けてはいけない」と言って、つい先日彼女が少年に渡した物だ。「この木箱のことは忘れていいから、大事にしまっておいて」と言われて、机の引き出しにしまいこんで、そのまま本当に忘れてしまっていた。

「あるんだな。それを確認してみるんだ。何か手掛かりがあるかもしれない」

「でも、『絶対に開けちゃだめだよ』って言ってたんだ」

Kは不安そうに言う少年を鼻で笑った。

「二人の友情を示すためだろう?口約束なんか知ったことか。もっと大事な物の前に、口約束そんなものは役に立たないさ」

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