星を見る人たち.19

「全部私だからできることだけど、ひとつの指標にはならない?あなたの能力って封じることができないでしょ?だから、その代わりに、他の人に協力してもらうってわけ。全部が全部うまくいくとは限らないし、綺麗事かもしれないけど、絶望なんてぬるま湯に浸かっているよりは楽しいんじゃない?」

「そんなことを言うためにわざわざあなたはこんな所に来たとでも言いたいの?」

寧子は思いっきり顔をしかめてみせる。本心とは裏腹に。確かに、兎に角命令にだけはかからないように防御策を講じれば、寧子の能力を防ぐことはできるかもしれない。特に、「簡易事象干渉装置」などという今の技術では作り出せない物が量産化された暁には、無謀な夢物語ではなくなるかもしれない。

「案外そうかもしれない。私をここに連れてきた人『たち』は何を考えてるかサッパリだもん」

二人とも星ばっかり見て、他のことなんか全然目をくれないんだもん。そう言って、ミオは笑う。一人すばるの方は寧子にもわかるので、ミオと一緒に笑った。他人の前で笑うなど久しぶりの――本当に久しぶりのことだ。普段は絶対にできない。しかし、これからはできるかもしれない。今ならどんなことでもできそうな気がしてくる。寧子は、とても嬉しかった。今の時間深夜一時半など考えずに、大声で笑いたかった。だって、今そうしなければ。


――きっと、ミオと寧子は二度とこうして笑いあう時を得られないという確信があったから。


「さて、と」

自分の頬をぺちんと叩いて、ミオは気合を入れる。

「私に一つ、命令してくれない?思いっきり、笑顔で。その方が強くかかるでしょ?」

やはり来たか、と思いながら寧子はきく。

「どんな命令をかければいいのかしら」

「『星の旅人』って、知ってる?」

寧子は頷く。宇宙を巡る魔法使いの名前だ。フィクションでよく題材になる人物だが、かつて実在した人物であるとも言われている。宇宙の全てを手中に収め、勝手気ままに星々を巡り、宇宙の法則全てを解き明かそうとした世界最高の天才。この星で知らない者はいないだろう。

「そっか。知ってるなら話は早いの。私に、彼と同じ呪いをかけて」

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