星を見る人たち.18
「私が、星を見ている?」
「そうよ、あなたも星を見ている。『いま』『ここ』に収まらない何かを探し続けている。魔法使いなんて職業をやって、
能力が発揮されないことに戸惑いながら、寧子は言った。
「そうかしら。私は何も起こらないことを望んでいるつもりだけれど」
試しに笑いかけてみるが、やはりびくともしない。ミオはしっかり寧子をだきしめたままである。普通であれば力を緩めるはずなのに、その気配もない。一体どうなっているのだろうか。
「いいえ、星を見ているわ。だってシノは、ずっと自分の未来を変えようとしているもの。そうじゃなかったら、私のことを不審に思ってこんなに能力をぶつけてこないはずよ」
ミオは寧子から離れて、「もう絶対大丈夫」とつぶやいた。
「……なんで、私の能力が効かないの?」
「仕組みを知ってるから、じゃ納得してくれない?」
ミオは首をかしげて見せる。だが、そんなことで防げるのであれば寧子の能力はとうの昔に使い物にならなくなっているはずだ。
「残念だけど無理ね。そんな話が通るわけがないわ」
溜息をついて、ミオは苦笑いした。
「寒くないのを確認したときに、いくつか魔力をかけた貴金属を身に着けたの。緊急用の防壁。でも、これだけじゃ防げないのは経験上理解できるはず。ただ、これがなければいくら私でも完全に防ぎきることはできない」
「あと二つ防御策が用意してあるの」と、さらにミオは続ける。
「リッケルハイムの糸術は、いろんな魔術を並行して使っているから、暴走を防ぐために自分の体内に常に複雑な防壁を展開し続けている、というのが二つ目の作戦。これを体得できれば、ほとんどの魔術を真正面で受けきることができるんだけど、とにかく長い経験がものを言う使い方だから普通の人にはまず無理。それで、三つ目」
ミオは、懐から短剣を出した。真っ黒なダガーで、刀身が鈍く光っている。
「このダガーは、杖よりも長い間私の魔力を浴び続けている。そのおかげで、この短剣は数秒前の私の魔力を取り戻してくれるように手助けしてるのよ。記憶を失う能力専用の防御ね。記憶を失っても、魔力を手助けに呼び戻せるってわけ」
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