星を見る人たち.17

「実をいうと、あなたの能力と似たようなものを前に見たことがあるのよ、私。さっきまで確信は持ててなかったけど、まさか図星だったとは……」

ミオは確信を持って言う。

「いつ気がついたの?」

「大体分かったのが、無機物に命令できるって言ってた時。ほぼ間違いないだろうと思ったのが、私もすばるさんも命令を聞いてないのに命令できていた時。耳を通して命令してるのだとしたら、そんなことは決して起こらない。あなたは口ではなく、目を通して命令してる。たぶんだけど、その気になれば人の考えていることが目を通して読み取れるタイプ」

寧子は首を横に振った。

「残念だけど、他人の考えを読み取れるほど私の能力は優秀ではないわ。単に、命令の通りにどんなものでも動くってだけ」

「能力の代償で、他人に感情を向けると記憶を奪ってしまう能力は、『命令するだけ』の能力ではないよ」

ミオが微笑みながら言う。やはり、バレている。「大丈夫。私にそういう能力は効かない。仕組みを知ってる相手にはその能力は出にくいの」

その言葉を聞いた寧子の口から、言葉が自然と零れ落ちた。涙も流れている。

「本当に?あなた、本当にそんなひどいことを私にさせるつもりなの?」

寧子の能力は、他人に悲しみや喜びをぶつけてしまうと、それ以降互いにその感情を持つことができなくなってしまうという代償を持っている。幸い、怒りであればそういった事態はまず起こらないので、寧子は日常的に怒ったポーズをとっているのだ。

「私が家族にどんなひどいことをしたと思う?手をさしのべてくれた人に、どれほど惨い仕打ちをしてしまったと思う?あなたには何一つわかりっこないわ。私の命令が、何を引き起こしてしまったのかも知らないクセに」

ミオは笑って寧子を抱きしめた。満面の笑みを浮かべながら、大粒の涙を流している。

「大丈夫よ、シノ。私じゃ受け止めることはできないけど、あなたの友達にはきっとなれる。だって、私たちも、みらいをずっと見続けているんだもん。その輝きの、暖かさから離れることができないでいるんだもん」

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