スターゲイザー.17→星を見る人「たち」.1
†
「なぁ、聞いたか?」
放課後、図書室に向かおうとリュックを背負い、バッグを持った瞬間に声をかけられる。背後からだ。顔を見るまでもない。自分に積極的に声をかける人間など一人しかいないからだ。
「何を?」
大概のことは聞き流していることを知っていながらわざわざ確認するとは相変わらず酔狂な奴め、と思いながら聞き返す。
「さっきのHRでさ、猫耳女の変質者が出るから気をつけろっつってたじゃんか。俺、そいつに朝会ったんだ。他にも見た奴がいたんだろうな」
猫耳と猫の目を持っていて、異国の言葉――単語は英語に似ている――を話す、高校生ほどの女性。白い斑のある茶髪で、青いバラの髪飾りと、同じく青いバラ飾りのついたローブに身を包んでいる。長い杖まで持っており、ライトノベルの世界から
「それがどうしたんだ?」
コスプレに過ぎないだろうと言うと、「いやいやそんなことはないぜ」と、返してきた。
「あの娘、間違いなく
熱っぽく語ってくるので、冷ややかな視線を返してやる。根拠を言え。煩わしいので、口には出さない。
「探知アプリが反応したんだ。あの娘が叫んだ後で。ほら、携帯にもちゃんと証拠が残ってる」
竜崎の携帯電話の魔力探知アプリ――
「お前のは誤作動が多いじゃないか。自分の魔力にさえ反応するような物をどうして信用できるんだ?」
竜崎は露骨な溜息をついて見せた。うざい。
「シノはロマンってもんが分かってねーなー。つい一週間前猫人間やっつけたばっかりなのにおかわりが来るんだぜ?燃える展開じゃんか」
燃える展開。猫耳女が「ライトノベルのヒロイン」だと言った竜崎本人も、大概
「命のやり取りだの世界の危機だのに、そんなもの必要ないわ。私に必要なのは、毎日を潤してくれる本だけよ」
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