スターゲイザー.16

「さて、と。あなたがここの維持に協力してくれないとなると、働きに対する報酬は別の物をあげないといけないわね」

。分かってはいたが、どきりとする。マヒルの趣味の時間の相手は『失踪』する。現実世界に戻ることもあれば、ここで朽ち果てていくこともあるから、どんな結末でも困らないように先回りしておく。

「私も帰って生活費とか仕事とかなんとかしてあげたいところだけど、肉体を対価に助けに来ちゃったから半世紀は帰れないのよね……」

「デイウォーカーなら、肉体くらい簡単に再生できるんじゃないんですか?」

ミオの質問に、マヒルは首を横に振る。

「残念だけど、そうはいかないわ。あの体はそれなりにレア物でね。つい最近に簡易事象干渉装置を作るのに大分痛めつけた後だから、難しいのよ。色んな所に怒られないように好き勝手してる身分に過ぎないわけだしね」

「え?」

マヒルの口ぶりでは、世界トップにふんぞり返ってるようなデイウォーカーが、井の中の蛙に過ぎないような印象だ。

「星々の海を見たんでしょ?この量、あなたの惑星の全部よりも明らかに多いんじゃない?」

確かに、星々の海に煌めく星々が多すぎて、闇だの虚空だのという言葉は浮かばない。それにしても、そうそうデイウォーカーよりも強い人間がいるものだろうか?

「言ったでしょ?天球儀は拾ったって。持ち主にも心当たりはあるけど、死んでるって。私の全てを犠牲にしてもどうにもできないような『何か』や『誰か』にみんなが支えられてるの。杖と短剣と装飾品を使えるのはそういう星の光すら届かない『よくわかんない存在』がいるおかげよ」

「ほ、ほえ~…」

ミオにできるのは、間抜けな声を出すだけだった。

「簡易事象干渉装置だってそういうところから技術と知識をちょっと拝借して作ったものだから、要のところは誰でも使える魔法なの。欲しい?」

「めっちゃくちゃ欲しいです」

正直に言うと、マヒルはにっこりと笑った。

「そう言うだろうと思って、準備しておいたわ。あなたが帰ったら手元にあるから、好きに使いなさい」

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