スターゲイザー.15

「どんな気持ちで、と言うと?」

「この星々の海で、あなたは何を見て、何を感じたの?」

しばらく考えて、言葉を探しながら、ミオは口を開いた。

「こんなに膨大な――世界中の全員がここの魔力を使っても枯れ果てないほどの――魔力が源で、羨ましいなって」

嘘はついてなかった。

「デイウォーカーの功績って一体どんなことをやれば一人だけで成し遂げられるんだろうってずっと不思議でした。魔術の教科書をめくれば必ず一回は名前が出てくるような人に憧れや嫉妬を感じない人はきっといません」

頷きながら、マヒルは黙って聞いている。

「でも。でもここから魔力を供給されてるってことは、きっといつでもここにいなくちゃいけないってことで」

周囲を見渡して、自分の考えをきちんと整理して、深呼吸までして。ミオは言った。

「ここで色んな人の死を見続けなくちゃいけないことに比べたら、他にどんな不幸も霞むんじゃないかなって。どんな幸福が押し寄せてきても、ここにい続ける不幸を癒すことはできないんだろうなって」

流されている間も、幾度か星が流れていくのを見た。深くは考えないようにしていたが、あの星々をきちんと観察すれば、その命の歩んだ軌跡が得られるはずだ。魔術の系統の一つに、そういうものがあるのだ。だが、あの魔術は他のどんな魔術よりも強靭かつ柔軟な精神を養うことを第一としている。そうでなければ、心が容易く壊れてしまうのだ。この星々の海は、その源である。辺り一面の全ての星々は、傍観者として眺めるから美しく見えるだけに過ぎない。触れれば無傷では済まされない。

そして、マヒルの魔力は、ここにある星々に触れることで初めて得られるのだ。魔力と引き換えに生まれる苦痛がどれほどのものなのか、ミオには想像もつかないものだった。

「そうね。その通りだと思う。でも私はね、ここにいることが何よりも幸せなことだと思っているの。星々の奏でる旋律が、私の生きる支えなの。他のものは、生きようともがいている内に、全部どこかへ行ってしまったから。」

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