スターゲイザー.7

「流石に短すぎるのでいくつか質問が」

挙手しながら、マヒルさん良いですか?と聞くと、いいわよ、とマヒルが頷いた。

「この天球儀は、従来の魔術観測用の機器と形状が似ているが、別物か。また別物の場合、用途は何か」

魔術の使いやすい環境や気象、また付近でどのような魔術が使われているかを探る機械と、見た目が瓜二つだ。

「別物。用途としては『未来を永遠に記録すること』なんだけど、どんな手違いがあったのか、『何億年先の未来であっても一通りに決定すること』に変わっちゃったみたいなのよね。拾うまで気がつかなかったんだけど、そういうことで間違いないみたい」

未来を一通りに決定する。いまいちピンと来ない。ミオが不思議そうな目をしていることに気がついたのだろう、マヒルが更に補足する。

「私が時間旅行の術を身に着けていることは知ってるわよね?私、ちょっとした好奇心から頑張って会得に成功したんだけど、時間旅行の面白さって未来に行っても過去に行っても時々が生まれるところにあるのよ。分かりやすいところだと、株価の変動かしらね。いつでもちょっとだけズレてて中々面白いんだけど、ある時からいつどこへ行ってもがなくなっちゃったのよ。その原因が、天球儀これにあるってわけ。どれほど強力な防壁で身を固めて、この世にないような頑丈さを持っていても、糸術ならば攻撃できるもの」

長生きしてるって便利よね。私ができないことでも、きっと誰かが私の代わりに頑張ってくれるんだもの。

マヒルは嬉しそうだが、ミオは苦虫を噛み潰したような顔になる。額には冷や汗まで浮かんでいる。

「つまり、鞭を使えってことですか?あんなキモチワルイものを?」

糸術の使いやすさを向上させた――糸を束ねることで鞭のようにふり回せるようにした――魔術がある。鞭であれば、普通に展開するよりも更に攻撃力が上がる。普通の展開では現実に存在するものへの攻撃がせいぜいだが、鞭であれば概念上の存在であろうと次元の壁の向こうであろうと攻撃範囲になる。しかし。

「別に良いでしょう。一秒あればコトが済むんだから。全身隅々まで隈なくまさぐられるような感触がするからって何よ。宇宙のため、人類の未来のため、お安いものじゃない?」

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