ヒイラギ.4

「それで、女神様。今日の仕事はどこでやるんですか?」

このまま話していても続かないと思い、質問をした。こうすれば女神サブ人格は今までの会話を全て中断して、質問に答える。

「今日はこの近く、都市区画での仕事になります」

意外な答えに、フィリップは目を丸くした。

「都市区画でノイズデブリが発生したんですか?」

ノイズデブリ。様々な要因で発せられる、電脳空間に負荷をかける信号のことだ。現代では使う人間も技術も失われてしまったものが大半を占めることから、ゴミデブリと呼ばれている。地球から飛ばされている信号であれば直接発信源を取り除いてしまえばいいが、亜空間内に本体があるものや、太陽系外からのものもある。全て取り除き、ノイズデブリの防壁が完成するまであと数百年。少なくともフィリップが死ぬまでの間は、決してこの仕事はなくならないだろう。

「都市区画内でのノイズデブリの発生は、人格データの破損に繋がるから優先的に防御と除去が行われているって……」

この電脳空間では人格をデータ化した都合で、。規格化された信号であれば問題はないが、デブリとなると話は別だ。大型肉食獣、異形の怪物、果ては全てを飲み込む空想上の存在に至るまで。ありとあらゆる脅威となって、電脳空間に生きる人間を蝕み、破壊しようとする。

「大事に至らないよう注意はしているのですが、どうしても限界があります。今はまだごく矮小なものに過ぎませんが、このまま放置すれば大型化の恐れもあります」

今はまだ小さい。それを聞いて安心したが、気は抜けない。小さいとなればその分探しにくくなる。

「既に三名に都市区画内での探索を依頼していますが、残念なことにまだ本体は見つかっていません。神徒フィリップ。あなたもどうか協力を」

「わかりました。神徒フィリップ、探索に向かいます」



三人が既に探しているのに、発見できていない。そのことが非常に大きな手掛かりだ。

「都市区画にあって、誰も探さないような場所……」

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