第42話 名探偵スミカの喧噪1
株式会社ミドリカワエンタープライズ、第二ミーティングルーム。ここで二人の男が神妙な顔で顔を突き合わせていた。
コンドー「進捗を聞こうか」
キシダ「タクアンのアプリケーションサーバが攻撃を受けている件ですが、ログを見る限り攻撃は成功していないと思います。phpMyAdmin がデフォルトでインストールされるパスを突くのは良くあることです。後はパラメータ無しで叩いてみるとか、同じURLを何度も叩いてみるとか。URL中のパラメータを偽装して他人に成りすまそうとするとかですね。フクシンやツボでも同様の攻撃が見られますが少数です。タクアンが異常に狙われてますね」
コンドー「攻撃元のIPをアクセス禁止にできる?」
キシダ「禁止リストに追加済みです」
コンドー「ということはもしかして」
キシダ「万事解決です」
コンドー「うおぉぉぉ!よっしゃぁぁーっ!」
・・・
会議室の方がうるさい……。
ガシャガシャガシャタッターン!
……ミフネさんがいつにもましてメカニカルキーボードをうるさく叩いている。
ぱりーん!
誰かが湯飲みを落として割ったみたいだ。
ぴーぴーぴー!
誰かがUPSの電源ケーブルに足を引っかけて引っこ抜いたみたいだ。
「きゃぁぁぁぁっ!」
誰だホラー映画見てるのは。
……ここは株式会社ミドリカワエンタープライズ。何の会社だったか忘れたが、ITっぽい会社である。
「……カさん」
「スミカさん!」
!?
喧噪の中で私を呼ぶ声がする。
私「ずっと心の中で私を呼び続けていた声が聞こえる」
コンドー「……何言ってるんですか?」
私「///」
言えない。ちょっとカッコつけてそれっぽいこと言ってみただけだなんて言えない。
コンドー「各アプリケーションサーバに異常なログが出ていないかチェックしてください。期間は昨日の0時以降でお願いします」
私「了解しました」
カタカタカタカッターン!
颯爽とパソコンの窓を開き、ログを見るためのコマンドを打ち込む私。なんかカッコイイ。
私「1番サーバだけやたらアクセスが集中しているようです。ロードバランサが偏ってる?」
コンドー「それって異常事態?」
私「ちょっと待ってください。問題のアクセス元は1件、これは同一ネットワーク内にある死活監視サーバですね。(カタカタカタ)……キシダさん、何か作業してます?」
キシダ「あ、してます。1番にじゃんじゃんアクセスしてます」
私「犯人はあなたです。キシダさん」
キシダ「てへぺろ♪」
コンドー「……(特徴的なアクセスパターンから死活監視サーバによるアクセスだと当たりをつけてIPアドレスを確認、そこから死活監視サーバの接続状況を確認して、今作業中のキシダにたどり着いた、といったところか)」
・・・
私「特に異常はなさそうです」
コンドー「了解。おつかれさん」
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