第41話 デートとデートごっこのはざまで

私はスミカ。湾岸ハーバーホテル最上階ラウンジでクロシマさんとデート中。おまけでミフネもいる。


私「次はどうやったらデートっぽくなるかしら」

クロシマ「まだ続けるの?(汗)」


ミフネ「私がクロシマさんと駆け落ちするから、スミっちがそれを後ろから追っかければ雰囲気出るのだわ」

私「却下です」


ミフネ「デート中にデートごっこするとかわけがわからないのだわ」


私「えっ///」

クロシマ「ん?」

ミフネ「……(汗)?」


私「成り行きだったけど、やっぱりこれはデートってことでよかったのね!」

クロシマ「スミカさんがそう言ったんだよ?」


私「いやだって……」

クロシマ「……」


ミフネ「デートじゃない!私が企画した花火大会ツアーなのだわ。ほらそこ!イチャイチャしない!」


私「ちょっとミフネさん。ここは空気読んでくれませんか?お花を摘みに行ってそのまま帰ってこないとかしてくれていいんですよ?」

ミフネ「スミっち、なかなかヒドいことをさらっと言うのだわ。最上階ラウンジを案内してあげたのは私よ?もっと敬意と感謝をもって、クロシマさんを譲ってくれるくらいしてもいいのだわ」


私「ミフネさん、今日はすごく攻めるのね。クロシマさんにはとっくの昔にフラれてるのかと思ってたわ」


クロシマ「いや、特に付き合ってたとかないけど。飲みに行ったりはしたよ」

私「おい……」


クロシマ「僕はモテるからね」

私「今度私と居酒屋に行ってください」

クロシマ「もちろん」


ミフネ「クロシマさん、私とスミっち、どっちが好きなの?」

クロシマ「ごめんよ。僕はスミカさんと付き合ってるから」

私「///」


ミフネはがっかりといった感じで頭を傾けた。


ミフネ「くっ、一番聞きたくないセリフをさらっと言われたのだわ」

私「ヤブヘビだったわね」


ミフネ「……ぐすっ。でも、さあ。人のものって欲しくなるじゃない?」

私「私の目の前でやらなくたっていいでしょうに」


私の言葉を聞いて、急にクロシマさんがそわそわし始めた。やましいことがあるのか?と問い詰めるようにクロシマさんの目を見てみる。


クロシマ「あ、いや……前々からLINEを……」

私「!?」


ミフネ「あの夜はとってもフィーバーしてたのだわ」

私「LINEのやりすぎでスマホがフィーバーしてたんですねわかります」


クロシマ「ご、ごめん」

私「もともと職場の仲間でしょ。LINEくらい普通よ。私のスマホだって職場の男子の連絡先入ってるわ。私のことマネージャーって呼ぶ彼のもね。見てたでしょ」


クロシマ「!?」

私「なによ」


急にクロシマさんが顔をキリっとさせてイケメンモードで私に詰め寄る。壁ドンしようにも後ろに壁は無い。


クロシマ「俺のことだけ見てろよ」

私「あなたが言うかコノヤロ」


クロシマさんの顔が目の前にある。が、近いと思ったのか、クロシマさんの方からさっと離れる。


ミフネ「あのースミっちさん。なんか恐ろしいことが聞こえたんだけど、二股してるの?」


私「モテる女はつらいわ」

ミフネ「ちょっ!クロシマさん、こんなスミっちのふらちな悪行三昧ゆるしちゃダメなのだわ。私と一緒に抜け駆けするのだわ」


私「逃がさないわよ」


私とミフネでクロシマさんの腕をそれぞれ反対の方向にぐいぐい引っ張る。クロシマさんが困った顔をしているが、ここにはお代官様はいない。情に流されて手を放したが最後、そのまま持って行かれてしまうだろう。私は絶対にこの手を放さないことが確定した。


クロシマ「ちょっ、スミカさん。楽しそうにぐいぐい引っ張らないで~」


花火の音は相変わらずこだましている。

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