第28話 乙女はUnity思う故にC#ありな夢見がち

隣人が魔法少女フォールトエンジェルのエッチなグッズを搬入する現場を目撃して以来、どことなく微妙な空気感に支配されている。だけど、ほっとけばそのうち忘れるでしょでしょ。


そもそも今はそれどころではないのよね。


私のゲーム製作が1ミリも進んでいないことに気がついてしまった。だからこそ言おう。


私「今日から本気出すわ」


言うだけ言ったらだいぶ満足したので昼寝をしたくなってきた。今は何もかもがめんどくさい。ふわっー


そう、私は夢を見ていた――――




透き通るようなスカイブルー……つまり青空が広がっている。いかにも”夏!”と言わんばかりの黄色い太陽。アスファルトの道から湯気が立ち上っている。汗がぶわっと吹き出し、セミがジージーと鳴いている。


エアコン!エアコンのスイッチを入れなくちゃ。リモコンはどこっ?


きょろきょろとあたりを見渡すも、地平線の向こうまで続くアスファルトの道と、その両側に深い深い森林が広がっている。


扇風機でもいいから。リモコンはどこっ?


不意にちりんちりんと風鈴の音が聞こえる。


おばあちゃんの駄菓子屋にはラムネが置いてある…………


おばあちゃん!おばあちゃん!リモコンはどこ!?


「これかねぇ―――――




私「うはーっ!!!」


ここは私の部屋。マンションの一室。目を覚ました私は汗でびっしょり。すかさずエアコンのリモコンを手に取り、スイッチを入れる。設定温度24度。凍てつかせろーーーーーーーー



私「ぶわーっくしょん!……おおお……さぶさぶ」


人類は過ちを繰り返す。行き過ぎた冷房は私の部屋を草一本生えない極寒の地へと変貌させる。気付いた頃にはもう遅い。(電気代的な意味で)


慌ててエアコンを消すが、窓を開ける気にはならない。(せっかくの電気代的な意味で)


すかさず部屋の隅においてあった布団を引っ張り出して潜り込んだ。


私「ふとんサイコー!!!!」



私が冷房をガンガンに利かせた部屋で布団にくるまってぬくぬくしていると、外からざーざーと雨の降る音が聞こえてきた。通り雨だろうか、雨が降ってるとお出かけしたくなくなる現象に名前を付けてやろうか。


だが!私はここでお出かけする!あえて!


なぜならお腹すいてきたから。ランチ食べなくては。



傘をさして近所の商店街へ行く。行きつけのカフェにはランチメニューというものがあるのだ。


カランコロン


扉を開けるといつものベルが鳴り響く。


私「ミックスフライ定食で」

ウェイター「かしこまりました」



アマネ「あれ、スミカもランチ?奇遇だね」

私「ほほう。来てたんだ」


アマネ「だけど私の勝ちね。今日はデザートにケーキも食べる予定なの」

私「くっ、じゃあ私はコーヒーも飲もうかしら……やっぱいいわ」


アマネ「サレンダーが早すぎやしないかい?」

私「私はそんなことよりももっと大切なことがあるのよ。たぶん」


アマネ「まじか。それなら仕方ない」



私「そういえば、私ってゲームを作ろうとしてる天才美少女でしょ?」

アマネ「私はそんな設定聞いてないけど?」


私「アマネには言った覚えないし」

アマネ「じゃあ誰になら言ったのさ」


私「そんなこと誰かに言いふらすと思う?」

アマネ「確かに。言いふらされても迷惑だわ」


私「迷惑言うな!(ぷんすか)」



ウエイター「ミックスフライ定食ですー」


私「よっしゃー」


私はミックスフライ定食の第一の砦、魚のフライ(なんの魚なのかは知らない)をサクサク食べていく。


ここのミックスフライ定食には3つの砦がある。魚のフライ、エビフライ、ヒレカツである。この砦を一つずつ崩していくのがランチ攻防戦の重要なポイントだ。


まず魚のフライ。これにはありったけのタルタルソースをつける。後のことは考えない。ここさえ陥落すれば後はテーブルにあるウスターソースで漆黒の闇が世界を覆いし約束されたネバーランドの残骸と片鱗を足して二で割って……


アマネ「あのー、スミカさーん?おーい」

私「あれ、まだ生きてたの?(もぐもぐ)」


アマネ「いやいやいや、生きてますよ。何言ってるんだね君は」

私「えっと……UnityとC#についてとか?」


アマネ「ほんとに?じゃあ結論どぞ。1・2・3はい!」


私「あんあもの本気出せば3時間で習得できるわ(キリッ)」

アマネ「言ったな?くーっ、しまった。録音しとけばよかった。」


私「くっくっく。つまり証拠がないということは10年でも20年でもかかった所で問題はないということね」


アマネ「そんな体たらくでなぜ3時間とか見栄をはるのか」


私「夢見る乙女は無敵だからよ」


アマネ「乙女すげー」

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