第27話 魔法少女フォールトエンジェル

サイバー魔界新世紀20XX。科学技術の発展によりあらゆる仕事はロボットやAIにとって代わられることとなる。人は人生の全ての時間を社会的活動、趣味、スポーツなどに費やすこととなる。しかしそれらの活動すら、人より優れたロボットやAIの出現により置き換えられていく。人類は人であることに自らのアイデンティティを見いだせなくなり、自らの身体を機械に置き換えたり、バーチャルユーチューバーになったり、脳の一部をコンピュータと接続して計算のみならず思考や信念、宗教といった自我の部分さえもコンピュータに依存するようになっていく。個々の知識や計算結果、感情までもクラウドに統合され、共有され、すなわち人類の脳みそまでもインターネットに接続し、人類の知見をそのまま共有する。すなわち人間は個でありながら、それぞれが等しく全てを持つ。しかしながら個が全てを理解するわけもなく、膨大な情報の一部、あるいはコンピュータの出した結果を眺めることしかできず、また人を知れば知るほど人とは何なのかわからなくなる。人はとっくに人間をやめてはいたが、ネット上にあふれるコンテンツは人間の有り様を描いているわけで、すなわち人が人であるために、人間ごっこを始めるというどこか不思議な光景が広がっていた。


悪の秘密結社バロン・ダイクストラはこの状況を利用して、全人類の脳をビットコインのマイニング用マシンにしてしまおうという壮大な計画を打ち立てた。彼の作りだしたサイバー妖怪軍団は人間を襲い、人間をマイニング専用マシンに改造していく。


人類はこれに対抗すべく自衛隊を派遣するが、圧倒的なサイバー火力の違いの前に苦戦を強いられていた。


その時、1体のサイバー妖怪がバグにより、他の妖怪とは違う力を持ってしまった。人にサイバー妖怪と戦うための力を与える、というものである。これはその妖怪と出会った少女達の物語である。


…………


丸い耳に白くてふさふさの丸い体、針金のような二本の足で、ノブナガは走り続けていた。



ノブナガ「はぁ、はぁ……このままでは……」


俺は必死で逃げていた。俺の職業クラスは錬金術師。人間に戦う力を与えるスキルが使える。もともとは人間のサイバー戦士に対抗するため、支配下の人間を妖怪軍団の戦士として洗脳してぶつけようというのが本来の趣旨であるが、騎士道精神を尊ぶ俺はそのような卑怯な戦いを良しとしない。そんな腑抜けた根性を叩き直すためにサイバー妖怪軍団の基地であるセントラルスタックを抜け出してきたのだ。


それでこの有様だ。警備兵が俺を敵とみなして追撃してきている。


アストロマーティ「待て、ノブナガ。貴様はダイクストラ様に歯向かうのか?消去してやる!」


くっ、どういきがったところで、俺自身に戦闘能力は無い。騎士道を体現することができない。だが諦めるわけにはいかない。チャンスが来るまで逃げて機をうかがう。これが今の俺にできる唯一の……


気がついたら人間の街の中を走っていた。行き交う人間が俺とアストロマーティを見て悲鳴を上げながら逃げていく。


だが制服を来た人間は俺たちに立ち向かってきた。


銃を持った人間の戦士……警官というやつか。彼らが俺とアストロマーティに発砲する。ECMコーティングされた特殊弾丸は対象物に当たると瞬間的に撹乱電磁波を出して、コンピュータ回路に異常を起こさせるシロモノである。


ビシーッ!


そのうちの一発が俺の体にめり込む!


ノブナガ「ふげぇっ!」


俺とは対象的にアストロマーティは戦闘用サイバー妖怪だ。警官の軽い弾丸程度では穴も空かない。……ていうか、そもそも狙われてなくね?


よくよく見ると警官たちは俺だけを狙っているようだ。


くそっ、ここはすでにサイバー妖怪の支配都市だったか。警官達は全てバロン・ダイクストラの手下だったってわけか!


ありったけの力を込めて空間跳躍テレポート魔法を発動する――――――適当な建物の中へ跳躍すれば、さしあたり時間を稼げるはずだ。


ビシィィッ!


警官の放った弾丸が体にめり込む。体中の機能が瞬間的に乱れる瞬間、テレポートが発動、しかしそれは制御が失われている……


ブオーン


アストロマーティ「くっ、見失ったか。だが遠くへは言ってないはずだ!探せ!」

警官A「探せっ!探せーっ!」


…………


ミツキ「だいじょうぶ?」


目を覚ますと俺は知らない街の薄暗い裏通りに居た。目の前に女の子が一人、こちらを見つめている。


ノブナガ「お……ま……え…………」


警官A「居たぞっ!こっちだ!」


!?


警官B「あちら側の人間もいるぞーっ!」


”あちら側”というのはバロン・ダイクストラの支配下に無い人間のことである。


ノブナガ「逃げろ……」


ミツキ「えっ?えっ?何!ムリムリムリ!おまわりさんだよ!逃げられるわけないじゃん!」


本来であれば騎士道精神にのっとって、俺が目の前の姫を守るべきシーンだろう。だが体中に受けた傷によって動くことさえままならない……いや、だがまだ使える魔法はある。


ノブナガ「おい人間」


ミツキ「あわわわ!意味わかんない!ちょっと!わたし無関係だから!関係ないから!」



バキューン!!!


警官が発砲してきた。


ミツキ「うわーん!」


女の子はパニックになっているようだ。威嚇だったのか、弾丸は誰にも当たってないが、女の子はその場に座り込んでうずくまってしまった。


ノブナガ「ちょっ、お前、せめて逃げるとかしろよ!」


ミツキ「ムリムリムリー!」


彼女は現実を否定しているのだろう。だが非日常を否定しているだけに過ぎない。彼女を日常に引きずり戻すための突破口はいくらでもある。


ノブナガ「…………あーっ!警官のコスプレをした変質者だーっ!」


ミツキ「えっ、マジ!最低!ありえない!痴漢撃退スプレーをくらえーっ!」


プシューッ!!!!!


警官A「……ギャーっ!!!!」


警官B「ふんぎゃーっ!」


ミツキ「とどめだーっ!」


バリバリバリッ!


……最後、スタンガンでトドメを刺しているように見えたがこの際気にしないでおこう。警官はそもそも人間なので、対人間用の兵器は十二分に作用する。


ノブナガ「ありがとう、助かった。君は命の恩人だな」


ミツキ「えっ、変な白い人形が喋ってる……うそっ、何っ!えーっ!!!もしかしてソニーの新製品?」


ノブナガ「俺はノブナガ。サイバー妖怪軍団から逃げてきた。あいつらは人間の脳みそを利用して膨大なビットコインを採掘しようとしてるんだ。そこでお前ら人間は俺らに対抗すべくサイバー戦士を鍛え上げているわけだな。ところがだ。バロン・ダイクストラの野郎、人間の戦士を捕まえて洗脳して、人間同士で潰させようとしてるわけだ。もちろん戦略としては実に正しい。だが美学がない。ロマンにかける。そうだろう?」


ミツキ「……えっ?」


ノブナガ「先程の君の戦いを見て俺は確信した。君は優秀な人間の戦士に違いない。奴らの非道を叩き直すため、君に力を貸したい。今回のことで俺が無力なのは重々承知した。君が警官が襲ってくる事実を受け入れられないのを見た時、自分も同じだと思った。心のどこかで俺自身戦ってしかるべきだと思っていた。でも結果としてこの有様だ。俺自身は弱かった。だが騎士たるもの、どんな過酷な現実も受け入れるし、自暴自棄になったり絶望したりもしない。1つでも守れるものがあるならそれに全力を出すだけだ。これは俺のわがままでもある。君がどうするかまで強制したりはしない。だが、奴らはきっとこの街を、君を襲うだろう。その時必ずこの力が役に立つ。受け取れ」


ぽわわわわあああああん


俺の魔法の光が彼女を包み込む。


ノブナガ「俺の騎士道は君に引き継がれる。君は普段通り生活するだけでいい。達者でな……」


ミツキ「いやいやいやいや、ちょっと待って。ありえない。なにこれ、体光ってるんだけど?ちょっと困る。シャワー浴びたら消える?」


ノブナガ「……力の組み込みが終われば消える。後3分だ」


ミツキ「おーけー、ジャスト3分ね。ところで力だのなんだのどうでもいいけど、貴方、ユーチューバーにならない?私のチャンネルのマスコットにしてあげるわ。貴方のしゃべり、ぜったいウケるって。やってみよ!」


ノブナガ「ふぁっ?」


ミツキ「私はフォールトエンジェルのミツキ!よろしくね、ノブナガくん!」





CAST


 ミツキ …… XXXXXX

 ノブナガ …… XXXXXX


 アストロマーティ …… XXXXXXX

 警官A …… XXXXX

 警官B …… YYYYY


 挿入歌

  「ジャスト・ヌルストリング」

  歌:XXXXXX

  曲:XXXXXX



次回予告


わたしはミツキ!フォールトエンジェルって名前でユーチューバーやってるの!


ある日わたしは警官コスプレの変質者を撃退したの。そしたら、ノブナガって言う変なマスコットが私に「力を与えよう」とか言い出して超ウケル!でもこいつの独特の喋りはマンネリ化した私のチャンネルに再生数という潤いを与えてくれるかもしれない。そうと決まればレッツゴーよ!


近所の空き地でロケしてると、ノブナガを追ってきたサイバー妖怪軍団が襲ってきた。危ないと思った時現れたのは漆黒のマントを来た女の子。その名もブレークエンジェル!貴方はわたしの敵なの?味方なの?それにしてもどこかで見たような……


次回『ビームまみれの風を解き放て!黒き旋風ブレークエンジェル!』に乞うご期待!


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