第22話 サーバに秘密基地的なワクワク感を抱いたなら一歩も引けない

私はとある会社に出張している。広いフロアに机を並べて、いろんな人が作業している。


そんなある日、私の隣の席のキシダさんが話しかけてきた。男性のぽっちゃり系である。


キシダ「消しゴム落としましたよ」


私「あ、ありがとうございます」


どこの小学校のやり取りだよ!と思いながらも、私が消しゴムを落としてしまったのが原因だったとしか言いようがない。不覚っ!



キシダ「あ、あとネットワーク機器の設定をいじるんで、10分ほどインターネットが使えなくなります」


私「はい。了解いたしました」


インターネットが使えなくなるのは痛い。


……


キシダ「ネットワーク回復しました」


ぼーっとしてたらいつの間にか終わってた。ネットの回復にミフネがはしゃいでいる声が聞こえる。


ミフネ「にゃははははっ!ネットなのだわ!私は今、世界とつながるぅぅぅっ!人類の英知が、心の叫びが相互にリンクされたのだわ!」


大げさな人だ……


それはそうと、いったい何が変わったのか気になる。


私「すいませんキシダさん。今回は何を変えたんですか?」


キシダ「ルータのVPN機能を使って各拠点からここのサーバにアクセスできるようにしました。ファイルを共有したりできるようにね」


私「へえ、そうなんですね」



キシダ「スミカさんの会社はグラントさんでしたっけ」


私「はい。株式会社グラントプリビレッジになります」


キシダ「じゃあ、ナガノさんのいる所か」


私「はい。ナガノ アマネは弊社の社員ですけど、ご存じなんですか?」


アマネとは時々ランチを一緒に食べている。会社も近くだし。



キシダ「時々ランチを一緒に食べてるんです。会社も近くですし」


……妙なシンクロ怖い。ていうか何?つきあってるの?


私「へえ、そうなんですね。アマネは確かにネットワーク系のエンジニアでしたね」


キシダ「そう……なんですかね。クライアント側っぽかったですけど」


ああサーバ・クライアントで分類するのね。そう言われると確かにアマネはクライアント側……つまりスマホ側の通信モジュール”も”作ってた。



私「詳しいことはわからないですけど、パソコンとかスマホアプリってよくサーバと通信してるわけじゃないですか。その通信周りってどういう仕組みになってるんですか?」


キシダ「それはサービスにもよりますが、httpえいちてぃーてぃーぴーならapacheアパッチnginxエンジンエックスが使えますし、Unityもhttpでアクセスするための関数群が整備されてますので、それらを利用するのが簡単だと思いますよ」


私「http?ChromeクロムとかFirefoxファイアフォックスみたいなブラウザでインターネットを見るためのプロトコルですよねそれ。それが私達が作ってるようなアプリの通信とどういう関係があるんですか?」



キシダ「通信のプロトコルに何を使うかは自由なんですけど、中でもhttpはリクエストを1つ送信すれば、応答が1つ帰ってくるっていうシンプルなプロトコルですので使いやすいです。さらに既存のライブラリが豊富なので、それらを利用することでアプリケーションの本質的な開発に注力できるわけです」


私「でもhttpはホームページ見るためのプロトコルですよね。それがどうしてアプリの通信で使えるのかわからないです」


キシダ「なるほどなるほど」


いろいろ突っ込んで聞いてみたところで少しだけ後悔した。説明が長くなりそうだから!



キシダ「例えばなんですけど、ブラウザでグーグルのページを開くとするじゃないですか」


私「はい」


キシダ「まずtcpでグーグルのサーバに接続します」


私「え、tcp?」


キシダ「はい。tcpです」


私「tcpってなんですか?」


キシダ「…………魔法です」


私「!?」


キシダ「あーあーあーちがう。まちがえた!」


私「え、あの……」


キシダ「ソケット通信っていうのがあってですね、これでつなぐとtcpによる通信ができるようになるわけです」


私「今、httpの話をしてるんじゃないんですか?」


キシダ「そこですよ。そこ」


私「はぁ」


キシダ「ここで、"GET /index.html" って文字列を送信するとですね、サーバからindex.htmlの内容が返ってくるんです」


私「index.htmlがホームページのファイルっぽいのはなんとなくわかりますけど……どういうことですか?」


キシダ「tcpでつないで"GET ~~"を送信するとサーバから応答が得られる。これがhttpです」


私「tcpでつないでるのにhttpってわけがわからないです」



キシダ「いやいやそこはあーでこーで」


私「ええ?でもそこはあーだからこーなんでしょう?」



…………



キシダ「ぜぇぜぇ……」


私「げほっ……疲れました……」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る