第18話 商店街ぶらっとグルメ紀行

私「くっ、喫茶店が満員で入れないとは……」


私は商店街のアーケードをさ迷っていた。


吹き抜けるのは風ではなく雑踏。休日、お店はどこも人であふれかえっている。どこか。どこか私の居て良い場所は無いだろうか。


この街はファッションとグルメと生活雑貨と家電と趣味の物で埋め尽くされている。にもかかわらず私の行くべき場所を見つけられずにいる。


しかも私のカバンの中にはノートPCが入っていて結構重い。これはまずい。動けなくなりそうだ。選り好みしてられない。そろそろ覚悟を決めよう。


きょろきょろとあたりを見渡すと、一見の中華料理屋が目に入った。中を見ると少しだけ席が空いていそうだ。ちゃーんす!すかさず店の自動ドアに飛び込んだ。


私「一人です!」


ウエイターが私を席に案内する。


私「ラーメンランチをください」


ウエイターがランチを私の席に運んでくる。


私「もぐもぐもぐ。ごちそうさまでした!」


レジでお金を払う…………ん?



気が付くと私は商店街の道の真ん中でぽつんと立っていた……手のカバンがずっしりと重く感じる。


私の居場所はどこだ。どこだ。歩いていると、とある喫茶店に空席が見える。そこだっ!


私「イチゴパフェをください」


店長「イチゴパフェですね。少々お待ちください」


私は窓際の席で休日の雑踏を眺めていた。この商店街は休日になるとやたら人が多くなる。雑踏にまみれるなんて軟弱な商店街め。しかし人類はなぜ雑踏と化したのか。その答えを知るものはいるかもしれない。だが私ではない。


店長「こちらイチゴパフェになります」


私「…………私はなぜイチゴパフェを頼んでしまったのかしら。その答えを私は知っていたのかもしれない。でも、もう思い出すことは難しい」


もぐもぐもぐ


…………


イチゴパフェを堪能した私はまた商店街を歩いていた。やはり荷物が重い。


私「もう帰る!(むすっ)」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る