第17話 スコープの中で二人きり
とある休日。たまには喫茶店でプログラミングでもしようとノートPCを持って繁華街を歩いていた。春の日差しがまぶしい今日この頃はお出かけするには最適だ。
とあるカフェの前の道路にパラソルとかテーブルセットが置いてあるのが見えた。いわゆるカフェテラスというものだろう。
ふと見ればカフェテラスでパソコンを広げてくつろいでいるクロシマさんを発見。(クロシマさんは行きつけのスイーツ店のイケメン店員だ。)ここぞとばかりにアプローチしてみよう。あくまでもさりげなく。さりげなく……
私「くぉっ、、、んにちは」
噛んだ。
クロシマ「ん?ああ、こんにちは。奇遇ですね」
私「え、はい。そうですね……」
自分から話しかけておいてなんだけど、話がもう続かなくなった。
私「……(汗)」
く、くるしい。
クロシマ「ふふっ。何か御用ですか?すいません、今日はお店の方はお休みなんです」
私「べ、べつにそんなのじゃないです///」
クロシマ「……そこで立ってるのもあれですし、もしよければ、席が空いてますのでどうぞお座りください」
私「は、はい!」
よっしゃーと心の中でガッツポーズ。なんだか良くわからないけど、一緒にいる口実ができた?気がする。
私はクロシマさんの左斜め前くらいに座る。クロシマさんはと言うとPCを眺めている。机の上にはコーヒーカップ。
…………
何か言わなくちゃ。
1.「愛してます。結婚してください」
2.「(こんな美少女を差し置いて)何を見てるんですか?」
3.「美味しそうなコーヒーですね。私も飲んでみようかな」
1は急ぎすぎとして、2か3だと思う。さあどれだ。好感度アップのベルが鳴り響くのはどの選択肢だろう…………でもだめ。決められない。どれもハズレな気がする。そう思うともう何も言えなくなる。
…………
クロシマ「何悩んでるんですか?」
私「な、悩んでなんかないですよっ!(汗)」
私はパタパタと手を横に振った。
そしてしばし沈黙……。
クロシマさんがカップをすすると、ノートPCを閉じた。
クロシマ「じゃあ少しゲームをしませんか?」
私「良いですよ。私強いですから!」
でまかせを言ってみた。
クロシマ「コイントスをして負けた方が、今面白いと思ってることを言うってルールね」
私「えっ」
ひゅーん
私が答える間もなくクロシマさんはコイン(おそらく100円玉)を弾く。左手の甲で受け止めて、右手でささっと隠す。
クロシマ「さあ、オモテ、ウラ、どっち?」
私「……ウラです」
クロシマ「どれどれ……おっ、貴方の勝ちです。じゃあ僕の面白いことね。目の前ででそわそわしながら僕を見てる貴方がすごく面白いですね♪」
私「あわわ///」
クロシマ「さて、貴方もなにか面白いこと言いたくなってきたんじゃないですか?」
私「……そ、そうですね。面白いことってわけじゃないんですけど、クロシマさんにちょっかい出すことに今は精を出してるわけです。なんか返り討ちにあってますけど」
クロシマ「はははっ!それはそれは……」
私「ああもう、この際だから言いますけど、クロシマさんってカフェテラスでコーヒー飲みながらPCするのが趣味なんですか?何のサイト見てるんです?ていうかほんとに元プログラマ?得意な言語は?何作ってたんですか?私の事どう思って……あ、いやいや……///」
なんか大胆なこと口走った気がする(汗)
クロシマ「ははは……情熱的ですね。今日はたまたまです。職人さんが体調不良で休んでましてね、店を開けられないわけです。ノートでニュースサイト見てただけですよ」
私「そう……ですか」
クロシマ「コンドーはできるプログラマですよ。その点は保証します」
私「そういうことじゃ……」
クロシマ「じゃあ貴方はどんな言語が得意なんですか?」
私「今はC#と……Unityです。ゲーム作ろうと思って。あと私の名前はスミカです」
クロシマ「あはは、すいませんスミカさん」
私「今ここにはコンドーさんはいません」
クロシマ「そうですね。ここにいるのは僕とスミカさんだけ」
私「だからグローバル変数みたくコンドーさんのことを出すなんて悪い設計です」
クロシマ「くすくす。これは失礼」
私「私、そろそろ行きますね」
なんとなく勢い余ってその場を離れてしまった。コンドーの名前が出てきたせいだろうか。妙にテンションが高く、攻撃的になっている。気持ちを鎮めるため、私は行きつけの喫茶店へと向かう。
なかなかこう、うまい話をして盛り上がったりできなかった自分にモヤモヤする……
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