第16話 タッチタイピングのシンクロ率(後編)
私の名前はスミカ。誰もが認める美少女天才プログラマ。とある会社に出張で来てみてびっくり。昼休みに変な金髪碧眼の女の子(ミフネ)に絡まれて、ハンバーガーを食べることになったの。
でもこれはただの食事じゃないのは明白。なぜならそのミフネに私の魅力を3つ言うように要求したの。言えなかったら私の勝ち。でもこの勝負にはカラクリがあって、たとえ言えたとしても、それはそれで私の魅力にメロメロってことだから実質私の勝ちなのよ。我ながらなんて策士なのかしら。
店員「いらっしゃいませ」
ミフネ「大きく口を開けないと食べられないくらい大きくて、ケチャップやマヨネーズにまみれたバーガーください。私とこの子の分ね。ポテトは要らないわ。飲み物は紅茶をホットで」
私「……そのバーガーと紅茶を1個キャンセルで、チキンとサラダをください。あとオレンジジュース」
ミフネ「ちょっとちょっとちょっとーっ!貴方もハンバーガー食べないと意味無いのだわ。私だけ女子力下がるじゃないの!」
私「一人だけ女子力下がってください。同じものを食べるなんて言ってませんから」
ミフネ「ぐすん……」
私「(はぁ……)わかりました」
ミフネ「(ぱぁぁぁぁ)」
私「チキンにケチャップをつけて食べればいいですよね。店員さん、ケチャップを1つお願いします」
ミフネ「(むすぅ)……なんか違う気がするのだわ」
そして、会計を済ませて待つこと3分……
店員「〇〇番の方~、お待たせしました」
ミフネ「ありがとうございます(キリッ)」
私とミフネは空いている席に座ると、さっそく食べ始める。もぐもぐ。そう、私は華麗にチキンをほおばる。もぐもぐ。ケチャップは控えめにつけて、口の周りにつかないようにする。
一方、ミフネは大きなハンバーガーを手でつぶし、マヨネーズやらケチャップやらが大量にはみ出したそれをほおばっている。なるほど、本人が女子力が下がると言っているだけあって、口の周りがケチャップの赤とマヨネーズの白でぐっちゃぐちゃになっている……
ミフネ「ふはっ!ほげっ!」
私「もっと落ち着いて食べればいいと思います」
ミフネ「ほげぎゃほごひげはげはひ」
……『そんなことしてられない』と言ってるような気がする。なんとなく。
ミフネは一通り食べ終わると、紅茶を飲んでまったりしている。
私「ミフネさんかわいいんだから、もっと女の子らしくすれば男子とも長続きするんじゃないの?」
ミフネ「私はいつだって可憐だし、男のに恋する以上はいつだって真剣なのだわ。それでもやっぱり、合う合わないっていうのがあるじゃない?入りからして相手が私の美貌に惚れたわけだから、妙に理想が高くなり過ぎてる気がするわ。だからほかのギャップが許せないんじゃないかしら」
私「ああ、そうなんだ」
ミフネ「そういえば、スミっちの魅力を3つ言う約束だったわね」
おっと、そういえばそうだった。
ミフネ「3つって難しくない?」
私「じゃあ1つでも言えたら引き分けってことにしましょう」
ミフネ「じゃあ、スミっちはかわいい、とかじゃダメ?」
私「ふふっ……いいと思うわ」
ミフネ「おーいえー!」
私はなんとなく満ち足りた気分でオレンジジュースを飲んでいた。昼からの仕事もその余韻でイケイケだったし、キーボードを打つ指もいつもより軽やかに動いたような気がした。全てが私の思い通りに事が運んでいる。世界と私のシンクロ率の高まりはかつてないくらいだった。そう、夕方に私のほっぺたにケチャップが残っていたことをコンドーに指摘されるまでは。
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