第9話 貴方の叩いたエンターは残像よ

プログラミングのイロハはいろいろあるけど、私のとっておきはforeach(ふぉーいーち)。こいつはデータの中身をざっと見ることができる実践的な構文。これさえあれば生きていける。さよなら先輩。


ところが私の仕事は、言ってみればタンポポの上に花びらを乗せるような、、、そう、 プログラム内で使用されている add() を add_commit() に書き換える作業なのだが、直前に ready() が呼ばれていたら add()のままでなければいけない、というものだった。


言ってる私自身わけがわからなくなりそうだ。


えっと、、、ここはready()ないからadd_commit()に書き換えー、、、次は?ああ、ready()があるからadd()のままね。。。。


なんか泥沼感ハンパない。「add」でプロジェクト内を検索してみよう。。。30か所くらいある。。。ぶはっwwwww。


30分後、完成したのでコンドーにチェックしてもらう。


コンドー「ああ、ごめんごめん。言い忘れてた。〇〇クラスの×行目だけどready()抜けてたわ。ready()追加して、add()に戻してくれる?あと、単体テストも書いておいてくれる?マニュアルはこれね(ぽん!)」


私「かしこまりました。工数が4時間とかなってますが、単体テストを書くのは初めてですのでプラス4時間ほどお時間を頂けますでしょうか」


コンドー「了解です」


なんか私、仕事のデキるプログラマっぽいやり取りができた?すごくない♪ちょっと感動した。「工数」とか「4時間」とか難しい言葉使ってる。さすが私。


「カタカタカターン!」


ふっ、今日もつまらぬエンターを打ってしまった。


ミフネ「ふっ、遅い遅い!見よ、私のエンターをっ!」


タッーーーン!


私「私より音が響く!?」


コンドー「(ミフネさん何やってるんすか……)」



ミフネ「これがメカニカルキーボード’(青軸)のパワーなのだわ!」


私「ちょっとうるさいので静かなキーボードにしてください」


ミフネ「ショボーン(´・ω・`)」


なんだろうこの女性ひと



ミフネ「なかなかやるわね、あなた」


私「えっ」


ミフネ「でも私のエンターさばきについてこられるかしら?」


ターン!タッーン!タターン!


くっ、すごいパワーだ。だが私も負けてられない。次の打鍵の瞬間、そっとキーボードの位置をずらす。勢い余った彼女の指が机に直撃した。


ぺちっ。


ミフネ「!?」


私「貴方の叩いたエンターは残像よ。ここにきて手元を見ないタイピングが仇になったようですね」


ミフネ「私のライトニングエンターをかわすなんて」


何そのカッコイイ打鍵名は。


ミフネ「覚えておきなさい。あなたもいずれエンターを恐れる日が来る。できるだけのことをやって、それでも何か失うかもしれない、そんなエンターを押さないといけない瞬間が来る。そんな時に一緒にエンターを押してくれる人との出会いを大切にしなさい。こないだ彼氏に逃げられてちょっと飲みたい気分だから付き合いなさい」


私「良い話っぽく言ってますけどオチで台無しですねお断りします」


ミフネ「やだやだやだーーー」


この後ミフネがめちゃくちゃお酒を飲むのを見ながら、少しだけ優越感に浸っていた私だった。

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