肆、「雲月は照らせない」
いつも通りの月の観測をし、もう飽きが来てしまった為に、地面を見つめ、家に戻ろうと身を翻そうとしたその時、少しだけ何かの予兆、そして予感がしたため、ゆっくりと、それでいて素早く視線を上げた。
そこに映し出されていた宇宙は、月が消えていた。
一体何事かと身を構えたが、よくよく見ていれば簡単。雲によって月が隠れていた。
雲と雲の間から、月の光が微妙に漏れていた。
それはそれで綺麗で、いつも通りの日常とは違った感じ方ができた。
だが、やはり「照らせない月」とは少し味気ないもので、いつもの月よりは直ぐに飽きが来てしまった。
そのため、いつもの日常に憧れつつ、家へ帰った。
いかにも木造建築が似合うといったような、西洋の木造建築の建物の窓から、もう一度月を見た。
すると、雲が完全に消え、月だけがそこに大きくいた。
雲に隠れていたからだろうか、その月は、非常な程の力強さを発揮している気がした。
正にそれは、雲に隠れ、力を充填し、最後の大事な場面で力を発揮する、というもののように感じた。
今日のこの月は、「雲月」と呼んだ。
姫月は嗤う 霧零 @KiriRei
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