参、「水無月に照らされて」

水面、月の下。


月光に照らされ輝く他、自ら月が映し出されていた。


余りにも綺麗で、見るだけで吸い込まれそうなその水と月を、手に取るようにすくい上げ、その冷たさを体感した。

余りにも冷たいが、そこには「想い」という温かさがあると思った。


濡れた手を乾かし、今一度水の中に手を滑るように入れ、水をすくうと、先程のような温かみは無く、ただただ冷たいだけの冷水であった。


誰かの思いが消えたのだろうか。

いや、そもそも誰がどんな想いでこの水を温めていたのだろうか……と、濡れた自身の手を凝視し、思考した。


────数瞬の間、手に温かみが戻ったが、直ぐにそれは失せてしまった。

手で触れてさえもその輝きを失わせないその水。


正にその輝きは、金剛石のよう。

月と合わされば、宇宙に浮かぶ星のようだ。


綺麗、の二文字では表現できない、素晴らしいものであった。


やはり、月とは不思議で不可解だが、いいものだ。






また、ここに来よう。

そう、思った。

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