　あすこの向かいにいるだろう

　移（い）動（どう）店（てん）舗（ぽ）の煙草（たばこ）商（しょう）

　おとつい冷やかしにいったらば

　帽（ぼう）子（し）のしたから云（い）ったのさ

　　お手に入れたるこの銅藍（コベリン）

　　むかし宙（そら）から掘（ほ）ったもの

　　宙がまだまだ硬（かた）くって

　　鍬（カッチャ）で掘ってたころのもの

　　お目にかけますこの石面（つら）の

　　波うち白々（しろじろ）はしります

　　模（も）様（よう）がわかりますでしょう

　　ちょうど煙（けむり）のようでしょう

　　これまた宙（そら）が硬くなる

　　それより昔にあったもの

　　宙にも海が満ちていて

　　そこにはしった波のあと……

　ここまで云ったらわかるだろう

　つまり、まあこれ、この銅藍（コベリン）は

　昔むかしの海と宙

　そこから掘られた化石なわけさ

　粉（こな）に削（けず）って刻（きざ）みの煙草へ

　混（ま）ぜたら一喫（ひとくち）で見えるそうだが

　昔むかしの海と宙

　いっしょに試（ため）してみないかい

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