煙草のいくつか

 暗やみが夜を名乗るとき、ぼくは煙草たばこに火を点ける。

 はちり、はちりと音がして、けむが明滅めいめつを繰りかえす。

 あい包装ほうそうほしりの。


 狐がよめにいく昼に、ぼくは煙草に火を点ける。

 かすかにふるえて立ちのぼり、触れるところに雨あがり。

 白の包装、にじりの。


 明けに氷柱つららが生えるとき、ぼくは煙草に火を点ける。

 ほのかな灯かりが飛んでまわって、風がいてはすぎていく。

 銀の包装、ゆきりの。

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