ツルっと2話目

「ジョン…もう俺はいい…行ってくれ!!」


 我が国がこの戦争に介入してもうすぐ1年が経つ。半年前に派遣された俺達第14師団は全線から少し離れた場所にベースを張っていた。夜中の2時に突然爆発音がし、それが敵の砲撃である事を理解した時には既に敵歩兵部隊が間近に迫っていた。

 本来ならば戦闘が起きないであろう場所だったので気が弛んでいた俺は装備を整える前に敵の銃弾を脚に受けてしまった。

 

 撤退戦を余儀なくされた俺達だったが俺は脚の傷が思いの外深く戦う事が出来なかった。そんな俺に肩を貸してくれているのが部隊に入ってからの友人のジョンだ。


「バカ野郎!!お前を置いていけるもんか!!」


「だが、俺を抱えてちゃお前までやられちまう…。」


「友人を置いていくくらいならその方がマシさ。」


「ジョン…。」


 もう運が良かったとしか言い様がない。俺とジョンは部隊からはぐれたものの更に背後の部隊のベースの近くまでたどり着いた。


「ここまでくればもう安心だ。頑張ったな。」


「ありがとうジョン。こりゃ一杯奢らなきゃいけないな。」


「たった一杯かよ。」


 笑うジョンに俺は静かに話し掛けた。


「なあ、ジョン…。正直な話、俺がお前だったらお前を置いて逃げていたかもしれない…。本当にありがとう。でも何で命掛けで俺を助けてくれたんだ?」


「言ったろ?友人だからだよ。」


「それだけとは思えない…なぁ教えてくれよ。」


 俺がそう言うとジョンは少し黙った後にゆっくりと口を開いた。


「そうか…なら言うしかないな。」


 ジョンは俺をゆっくりと地面に下ろすとおもむろに服を脱いだ。そこには1羽のツルがいた。


「お…お前は!!」


「はい。あの時助けていただいたツルでございます。あの時の恩を返す為に人に化けておりました。なぜと問われたら答えない訳にはいきませぬ…。しかしながら正体を見せてしまったからにはあなた様の前から去らねばなりません。」


「そ…そんな…。」


「お味方のベースはすぐそこでございます。お命大事に…どうぞお達者で!!」


 そう言うとツルは空へと飛び立って行った。ある意味未確認飛行物体であるツルに味方のベースから銃弾が撃ち込まれたがツルは歴戦の戦闘機のようにそれをヒラリヒラリとかわし彼方へと消えて行った。


 ありがとうツル…お前の事は忘れない。



 

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