ツルっと3話目
「東京ってのは人がこんなにいたかね~。」
10年ぶりの同窓会に東京に出てきたものの時間帯が悪かったのか電車は満員だった。息子に東京の電車は田舎の年寄りにはきついから送っていこうかとの申し出を断った事を後悔した。
込み合う電車の中サラリーマンや学生に押され転びそうになる。
「大丈夫ですか?よろしければどうぞ。」
よろけて押し出された所に座っていた青年が席を譲ってくれた。お言葉に甘えて座る事にした。
「ありがとうございます。東京の電車に80才のお婆さんが乗っちゃダメね。」
私の自虐に青年は反応に困ったのか微笑んだだけだった。
「本当に助かりました。何かお礼にあげられる物があれば良いんだけど…。」
私がバッグの中に何かないか探っていると青年が話し出した。
「いえ、そんなやめてください。それに…」
そう言うと青年は込み合う電車の中でもたつきながら服を脱いだ。そこには1羽のツルがいた。
「お…お前は!!」
「はい。あの時助けていただいたツルでございます。いつか恩返しをと思い陰ながら見守っておりました。こうして恩を返せた事がこの上なく幸せでございます。」
そしてツルは飛び立とうとしたが満員電車なので身動きがとれず次の駅までの5分間私の目の前に立っていた。
少々の気まずさを残して次の駅で降りたツルは空へと飛び立って行った。
ありがとうツル…お前の事は忘れない…。
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