プロムナードさんはビロードの輝き

 名月さんの美しさにうっとりしながら過ごすこと約三ヶ月。

 その間に職場で配置換えに遭ったり職場に退職届叩きつけたり急遽引っ越しの手配をしたり、なんか僕の人生史上割と激動の時間が過ぎていきました。イベント発生頻度高すぎ。

 そして、九年間過ごした馴染みの町に、いざ別れを告げんという師走のある日のこと。僕に天啓が降りたのです。


「ちょっといろいろありすぎて人生に疲れたから、見立てペンもう一本くらい買ってもいいんじゃない?」


――と。



 見立てペンの話はさんざっぱらしましたので、今回は「誰の見立て」だの「推しが云々」だのといった話はざっくり割愛しますね。

 半ば衝動的に買い求めた新顔さん、その名も『プロムナード』。メーカーはセーラー。お値段一万プラス税くらいの金ペンです。

 「おいおいまたセーラーかよ」とお思いになるでしょう? はい、またセーラーです。

 ほしくずさんを買い求めて以降、なぜかセーラーの商品ばかり目に留まるようになり、二〇一八年十一月現在、手持ち十一本のうち五本はセーラーになってしまいました。

 コクーンさんをお迎えしてしばらくはパイロットばっかりだったのに……。メーカーの贔屓の仕方が極端ですね、僕は。


 プロムナードは三色展開ですが、色ごとに用意されている字幅の種類が違います。端的に言えば、ブラックが一番種類が多いです。

 シャイニングレッド・ブルーは細字・中細・中字の三種であるのに対して、ブラックは細めと太めに、それぞれもう一歩ずつバリエーションを設けています。

 日本語を書くのであれば、細字〜中字の間で選んで問題ないですが、万年筆に慣れて、書き味にこだわりがある方でしたら、よりバリエーションの多いブラックの方がお気に召すやもですね。


 僕が選んだのは『シャイニングレッド』中字。

 シャイニングと名の付く通り、軸には金のラメが入っています。これが結構ぎっしり敷き詰められていて、けれど光り方はぎらつくでもなくエレガント。ペンクリップにも碇マークの装飾があって、お値段のわりに高級感があります。

 書き味はぬるぬる系。過去のペンと比較すると、ウォタ子さんほどのぬるぬるさではありませんが、それは字幅の違いかな、という印象。

 金ペンなので、使い込んでいけば、より滑らかに書けるようになっていくと思います。

 現時点だと、ほしくずさんの方がやや書きやすいかも。ほしくずさんは鉄ペンなので、使い込みによって劇的に成長するようなことはありませんが、やはりキャリアが長くなるとそれなりに変化はあります。

 日本製の中字なので、罫線1cmくらいであれば漢字も楽に書けます。


 さてさて、こちらのシャイニングレッド。実は、前回ご紹介した名月さんと首軸をすげ替えることができます(キャップ交換は無理だった)。

 どちらもきらきらしているので馴染むのはもちろんなのですが、名月さんの本体に、シャイニングレッドの首を据えると――。


 めっちゃくちゃにかわいいです。


 もちろん、レッドの本体に名月さんの首でもOK。

 イメージ的にはいちご練乳的かわいさを感じます。

 こういった改造万年筆は、やはり「実行の際には自己責任で」というお断りを入れざるを得ないので、あまり声高に「皆も買ってやってみて」とは言えないのですが……。

 とはいえ、もしもプロムナードと名月さん、両方を手にする機会に恵まれましたならば、この組み合わせはぜひ。ぜひぜひ。ぜひぜひぜひに。試してみてくださいませ。

 ただでさえ深い万年筆沼、そのさらに深淵へとどぼんすること間違いなしです。

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