第3話 能力 ~いやいや、なんで水鉄砲!?
あれから一週間くらい経った。
今
突然世界を救ってくれと言われても、雄也は雄也だ。
そうそう、異世界という事は武器で戦うのだろかと思ったら、リンクは普段魔法を中心に戦うので武器は持っていないそうだ。直接戦う時は
「リンク、何度も聞くけど、本当にこれで戦うの?」
「はいー、そうですよー。雄也さんにぴったりの武器でしょう?」
「それ、嫌味で言ってる?」
「えー、どうしてそうなるんですかー? 私の
「まぁ、水の妖精……アクアフェアリーだっけ? リンクがそうなら結びつきはするけどさ、これはないよね……」
さて、状況を説明しよう。雄也は今、決戦の時に備えて武器を持っている。リンクを使役し、力を行使する練習とその力を自身に
……プシュー
……ポタポタポタ
勢いよく出たかに思われた水は綺麗な放物線を描き、その後プラスチックで出来たかのような銃口の先から、水の滴る音が虚しく聞こえてきた。
「いやいやいや、なんで水鉄砲なんだよ! しかもこれ幼稚園児が使うようなおもちゃの水鉄砲でしょ! いや、これ世界救うの無理やん。そりゃあ最初はレベル1かもしれないけどさ、ひ○きの棒とかブロ○ドソードとかさ、ゲームに出てくる武器の方がまだマシじゃね? これがゲームとか小説なら俺は作者を疑うよ……」
雄也が思い切りツッコミを入れる。
「何をおっしゃるのですか! この水鉄砲、見た目こそおもちゃっぽく見えるかもしれないですが、
と怒った口調のレイア。
「雄也さん、この水鉄砲はウォータージェットって言って、なんと、水の妖精の力で水の補充をしなくても無限に水が放てるという最高の水鉄砲なのですよー。凄いでしょうー」
と笑顔で顔を近づけるリンク。
……プシュー
……ポタポタポタ
普通の水鉄砲より大きいやつ、幼い頃はあったよね。最近あんまし見ないけどさ、おもちゃ屋さんとかには今もあるのかな? 水の溜まってる横型のタンクがついててさ、取っ手ぽい引き金をさ、引くとブシューって水が出るあれ。色もさ、黄色と黄緑というまさにおもちゃのような色合いね。はい、もう一回引き金を引いてみましょう。いっせーの!
……ブシュー
……ポタポタポタ
「よし、さっきよりは少し勢いがあった……これで魔物を倒せる……って、おーい、これ無理無理! 絶対無理! 敵倒せるってレベルじゃねーぞ!」
「すごーい! 『ノリツッコミ』って私生で初めて見ましたー!」
「お嬢様、私も初めてです」
「いや、二人共感心している場合じゃないから。リンクの力を引き出して戦うというのはまだ理解出来るんだけどさ、俺が戦うってなった時、剣とかなかったら無理じゃないかなって思ったんだよね?」
「ですが、雄也様、言わせていただきますが、剣の心得はあるのですか?」
「いや、それは……」レイアの問いに対し、言葉に詰まる雄也……。
「剣の心得があるならまだしも、
「わかりました、そこまで言うのなら、今までの練習の成果を見てみましょう。さぁ、雄也さん、あそこの岩に向かって
ワクワクしているかのような
「あ、放つ前に<
よくわからないが、なるようになれだ。
「
雄也がそういうと、水鉄砲が光を放ち始めた。
「今です! 私に続いて叫んで! <打ち砕け!
「え、あ、打ち砕け!
次の瞬間!
――!?
猛烈な勢いで
「え、えぇええええええ!?」
―― ちょっと待って。洒落にならないんだけど。
思わず驚きの声をあげる雄也。
「凄いでしょう。これが私の力ですよー」勝ち誇ったような顔のリンク。
「雄也様も上手く
「慣れてくると言葉にしなくても
リンクが『えへん!』というしてやったりな顔をしている。
「意思伝達は
「あ、もしかして、エレナ王妃もその
レイアの言葉に対し疑問を口にする雄也。
「うん、そうだよー。お母様の前では嘘もつけないんだよー。あの
―― そうだね、その能力は確かに反則だと思う。
妖精には固有の
他にも同時に
「あれ? 思ったんだけど、王妃だったら、その
「……そうもいかないのですよ」とレイアが続ける。
「
「それじゃあ、俺が行っても無理なんじゃ……」
「そうでもないのです。
「人間の夢みる力……それって……」
「先日我々が雄也様を選んだのは夢みる力が強かったからと言いましたね。雄也様なら恐らく、その結界を破れると、我々は考えました。さらに言えば、
「もう、レイアは心配性なんだからー。ちなみに人間と契約出来る妖精も限られてるんだって。雄也さんの
リンクが褒めて欲しそうな顔をしているのは気のせいだろうか。
「……そうなんだ。で、結界を破れたとして破ってしまえば……」
「……雄也様、他人任せにしないで、大人しく戦って下さい」
さすがにレイアには、他人任せにしようとしているのがバレたらしい。結界を破ったあと、水の妖精の軍隊か何かに攻めてもらったら早いよね? いや、むしろ王妃なら、一人で倒せるんじゃないか? と思った訳で。
「結界を破っても、恐らく雄也様しか中に入れませんよ?」
そんな雄也を心を見透かすかのようにレイアは言う。
「結界の中を進める妖精が居るなら使役された妖精だけなのです。結界の中で雄也様がリンク様を使役する事で、リンク様も中に入れる、そして、十倍の
つまりこうだ。結界の前で雄也の攻撃で結界を破り、中に入る。妖精達は中に入れないが、雄也が『結界の中でリンクを使役する』―― 所謂、召喚をする要領で、リンクを呼び寄せる事が出来るらしいのだ。どうやら覚悟を決めるしかないようだ。
「よーし、いよいよ明日、敵の本拠地に出発だーー!」
まるで遠足にでも行くかのようなノリのリンク。
かくして雄也は、初の異世界ダンジョンへと足を運ぶ事となる。
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