第19話 回復魔法のエピローグ
目が覚めたると、日差しが窓から入ってくる。
いつものような一日が始まり、日常として経過していく。
「おはよー」
こちらが起きたのに気づいのか寄ってくる。
少し寝すぎたか……、先にアリナが起きていたとは。
「あぁ、おはよう」
「サンドイッチっていうもの? をニーナさんから教えてもらったの」
激しい音をたててキッチンに向かっていき、すぐに戻ってきて不格好な白い三角を顔に接するほどに押し付けてくる。
「具がおちるからちゃんとテーブルで食べような」
「はぁーい。……ぉっとっと」
体が大きく揺れて、倒れかけるがすぐに持ち直す。
「大丈夫か?」
「へーきへーき」
すぐにベットから抜け出て寝間着から着替える。
「おオ、世話になってるゼ」
ワンピースを雑に着たニーナが我が物顔で椅子に座っている。
「何しにきたんだ」
「事後処理ってか、まぁ報告だナ」
とりあえず椅子に座って、歪んだサンドイッチを持つ。
具が偏っていて、味が薄かったり濃かったりする。
「もうすぐ学園に行くから手短にな」
アリナは気がはやってすでに制服を着ているがあまり気にしないでおく。
「ヒューベルトは無事に今でも黒服率いて楽しくやってンらしいゼ。
ノイルって女もな。二人ともそれなりの罰はあるンだがそれほどヒデェわけじゃねぇ」
それを聞いて一安心する。
なにより一日ほど俺は眠り続け、昨日の夜にようやく目を覚ましたばかりだ。
「あんたは、いつまでその体なんだ?」
「正直言えばサッサと変えたいンだがねぇ……、しばらくは死んだフリして休んでようかナぁ」
適当に言いつつ、しっかりとサンドイッチを口に運んで、微妙な顔を隠さずに暴露させる。
「学園から帰ってくレば引継ぎの奴が来るだろうからヨ、適当に仲良くしときナ」
食べるだけ食べてニーナはそのまま出ていく。
俺も早く登校の準備をしよう。
中央大学附属高校、通称が魔法学園。
白色がメインとなった校舎群はまだ登り切っていない日差しを最大限に反射させて自己主張をする。
高校で使っているのは3校舎程度だが、アリナにとっては広く目新しい場所だ。
「あれ何だろうね!」
まだ激しい運動はできないし、定期検診も必要だがアリナは健康な状態まで戻ってこれた。
よそ見をしていたせいで、アリナが派手に倒れる。
「まだまだ体が合ってないんだから……、ほら傷はないか?」
「うううー」
恥ずかしそうに顔を隠しつつも膝の擦り傷を見せる。
「このくらい私が――」
「良いからじっとしてて。《治れ》」
他者に回復魔法を発揮させるこつをつかんだ気がするんだが、おそらくアリナ相手にしか上手くいかないだろうな。
けれどアリナにまた魔法を繰り返し使わせる訳にはいかない。
燃費の悪い空間魔法なら3、4回で蓄積した魔力を使い切り今までのような手段をとるだろうし、
彼女自身がそれに気づいてるかは怪しい。
「ありがとうね、アーシャ君」
「はいよ。じゃあ行くか」
完治したのを確認してからハンカチで付いた土や砂を軽く拭う。
今日からアリナが学生として、確かなあるべき生活を送ることができる。
空はただただ青く澄んでいる。
この白い街は日の光を目一杯に反射させて眩しく輝きクリーム色のタイルがコントラストを生んでいた。
魔法学園が存在する魔法大国クレデリアは多くの問題が発生する。
今回もその一つだし、次もきっとあるだろう。
……今の俺ならなんとかやっていけそうだ。
回復魔法の使い方 完
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