お昼ご飯の時間 その1
今日の政治会議でいくつか決定事項があったのですが、ヴァリアッテにとっては、やっぱりちんぷんかんぷんな事ばかりだったので、いまいち把握できていませんでした。
「大義であった。それでは昼休みとしようぞ」
昼の休憩をヴァリアッテが宣言したので、政治会議は一時中断されました。
その一言で、十二使徒達が席から立ち上がり、ヴァリアッテに深々と一礼をして部屋から一斉に出ていきました。
「ふう……」
ヴァリアッテはちょっとでも会議の内容を理解しようと頭をフル回転させていたため、すっかり疲れ切っていました。
頭を使い続けていたのに、政治の話が意味不明であった事にやるせなさを感じると共に、どうすれば分かるようになれるのだろうかと腕を組んで考えてみましたが、答えなど出てくるはずもありませんでした。
『ぐぅ……』
そんな時、政治の事よりもお昼ご飯の考えようと、お腹が主張したかのようにお腹が鳴りました。
「まずは腹ごしらえだな。それから政治の事を考えれば良い」
ヴァリアッテは気持ちをそう切り替えて、会議室を出ました。
「余についてこい。お昼ご飯の時間である」
当然、久能が忠犬よろしく扉の前で待っていました。
そんな久能の態度にヴァリアッテは満足しました。
「はい!」
ヴァリアッテが歩き出すと、久能はそんな彼女の後ろについて歩き出しました。
犬のであるのならば、ご主人様を立てなければならない、そんな久能の気遣いなのですが、その気遣いをヴァリアッテは疎ましく思っています。
歩を緩めて、久能と並んで歩こうとするのです。
「今日は街に出るとしよう。久しぶりに大衆食堂の定食が食べたい。庶民の久能には懐かしい味かもしれんが、余には不思議な味なのだ。あの感じが気に入っている」
封印される前に何度か行った事がある大衆食堂に行く事にしました。
魔王が大衆食堂で定食などもっての他だと昔は言われた事があったのですが、今では誰もそんな事は言いません。
皆、ヴァリアッテに意見した後の処遇が怖いのです。
ヴァリアッテにしてみれば、誰かに何かを言われたところで己の意思を変えるつもりもなければ、意見してきた者を罰する気などさらさらないので、勝手な思い込みであったりするのですが、ヴァリアッテにぼこぼこにされた事が皆のトラウマになっているのかもしれません。
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